自動運転の未来

モビリティピッチは、MaaSに真剣に取り組む方のための情報共有のイベントです。
小田急電鉄とヴァル研究所が共催し、MaaSの実務者が語る正しい情報や具体的な取り組み、課題の共有と、気づきを与えあえる場・コミュニティ作りを目指します。

第5回では自動運転の研究・開発から実際の運用に取り組まれている4名に講演いただきました。
モデレーターは小田急電鉄・次世代モビリティチーム リーダーの西村 潤也さんです。

おひとり15分という短い中で、濃縮したさまざまな情報や事例を共有いただきました。
いくつかのトピックスを抜粋してご紹介します。

※実際のセミナーでは詳細なデータ等もご紹介いただきましたが、本レポートでは割愛している箇所がございます。

プログラム

※講演者のご所属、お役職は2021年9月時点のものです。

講演1
L4自動運転の未来

ホンダモビリティソリューションズ株式会社(以下、HMS) マネージャー 朝倉 隆太さんより、HMSが展開する事業内容と、自動運転が現実化することによって起こりうる未来の姿について講演いただきました。

Icon list red HMSが展開する自動運転事業

はじめに、会社設立の背景や、自動運転サービス事業の概要を解説いただきました。

HMSは、Hondaとして培った「安全」という移動サービスの根幹に関わる技術と知見を活かして、ユーザーインサイトをとらえた新しい移動体験やサービスを作っていくことを目的に、Hondaのアセット・資産を活用しつつモビリティサービスを企画・運用する役割を担います。

企画段階のものも含め「カーシェアサービス」「アセットビジネス」「自動運転サービス」「Beyond MaaS事業」の4事業を展開されており、今回のテーマである自動運転サービスは2020年台半ばのローンチを目指して企画や実証を進めている段階だそうです。

HMSの自動運転サービスはレベル4(L4)相当で、ハンドルなしかつ対面4人乗りの自動運転専用車両「Cruise Origin(クルーズオリジン)」を軸に、新しい移動体験の創出を目指されています。

米GM傘下で年間120万kmの自動運転走行実績を持つ米Cruise社と提携して日本国内での事業を企画・運営されており、2021年9月からCruise社の技術と車両による実証実験を宇都宮市芳賀町で実施するなど、日本の交通環境における安全性検証と適合化を進めているところだと述べられました。

Icon list red 自動運転が創る未来

次に、自動運転がどのような未来を創るのか、また、具体的にどのようなサービスになるのかなどお話しいただきました。

自動運転は生活圏から地域社会、そして世界といった幅広い層で、さまざまな貢献が期待できると言います。
例えば、EV車両という点でカーボンニュートラルという世界的な取り組みへの貢献や、車両のデータ活用による渋滞の緩和・解消から都市全体における交通のあり方の改善、交通事故原因の大部分である“ヒューマンエラー”がなくなることでの交通事故の減少などが挙げられます。

しかし、これらを実現するためには、利用者に自動運転を「便利だ」「乗ってよかった」「もっとこの地域にも欲しい」と望まれて普及していくことが大事なポイントです。
こうしたユーザーインサイトやニーズを起こすためにサービスの企画を進めていくことがHMSの役割だと述べられました。

続けて、実際にどのようなサービスになるのか、具体的なユーザー体験を例にご説明いただきました。

Cruise Originを用いた自動運転サービスでは、アプリで配車を予約するオンデマンド配車を前提に、既存の交通システムの“空白地帯”を埋めるものとして検討していると言います。

この“空白地帯”とは、ドアtoドア・ポイントtoポイントで移動できるタクシーのように利便性が高くコストも高いものと、鉄道やバスなどタクシーに比べて利便性が低くなりコストも低い公共交通との中間的なポジションを指します。

自動運転サービスではドライバーレスのため、既存のタクシーやバスのコスト構造の大部分を占める人件費がなくなり、価格弾力性が生まれます。加えて、快適な移動空間・プライベートな移動空間を提供するといった付加価値をつけることで、利用者に新しい移動体験を提供することができます。

一方で、現在は走行環境が限定されていることや、臨機応変さなどを含めたホスピタリティのあるサービス提供が課題であり、だからこそ自動運転サービスは既存の交通システムの“空白地帯”を埋めるものとして、共存や相互の補完が必要だとお話しいただきました。

Icon list red 自動運転のユースケース

続けて、自動運転サービスの具体的な利用シーンをお話しいただきました。

自動運転サービスは、現在の日常交通における不満や不便、不安を解消する手段としてさまざまなユースケースが期待されています。

例えば普段は何事もなく電車で移動する距離でも、天候や体調、荷物の量や子供を連れていく必要がある時は不便さや困難を感じます。そんな時に、利便性が高く、比較的安価な移動手段があれば、新しい選択肢になりえると考えられます。

電車やバス、マイカーでの移動が主である現在、一般的には移動は一種の「作業」と言えます。そこで、自動運転サービスによって移動時間を自由に、かつプライベートな空間で過ごせられるようになれば、相当な価値を生み出す可能性があり、新しいライフスタイルも生み出すことができると述べられました。

今後、自由度の高い移動サービスがパッケージになった不動産などによって住まいや居住地域の選択肢がさらに広がり、例えば子どもの塾の送迎など、3、40分のちょっとした時間を自動運転サービスにアウトソースすることで、多忙な日々の生活から時間を捻出することができます。
そうした新しいライフスタイルを創造するところにもチャレンジしてく価値があると言います。

朝倉さん

移動がなにかやりたいことのボトルネックになるといったことは非常にもったいないと思っています。
快適な家と、楽しいであろう目的地。この間に“移動”というプロセスが入ることで、少し面倒だなと、「移動」が楽しむ機会を不意にしているケースは結構あると感じています。

自動運転サービスの登場で、プライベートで快適な空間が家の前まで来てくれて、移動中も家で過ごすのと同じように快適に過ごせて、楽しい目的地にたどり着ける。そんな、一連の楽しい時間を途切らせないような使い方になってくるのではと思います。
また、価格弾力性を活かして、月額・定額制サービスができると、本当に快適な移動体験が日常的になってくる日も来るかもしれません。

こういったサービスを、自動運転の特性を活かしながら作っていきたいなと考えております。
我々だけではできないことがいっぱいありますので、いろんなプレイヤーの方と一緒に大きなサービスにしていければ幸いです。

Q&A

朝倉さんとモデレーターの西村さんのQ&Aをいくつかご紹介します。

将来的な展望として、2020年台半ばぐらいに自動運転レベル4を社会に出していくというお話しがありました。今2021年ですから、あと4、5年ぐらいのちに展開する、というイメージでしょうか。

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西村さん
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朝倉さん

はい、おっしゃるとおり2025年か2026年辺りがターゲットだと思っています。
その時までに必要な法整備や免許の扱い、地方・都市での技術の適合性、自動運転車両を走らせるためのインフラ整備などに、おおむね4、5年ほどの期間がかかってくるのではと見越しています。

車両の開発、法整備、それが進んでいたとして、じゃあどういうサービスとして世の中に実装していくのか、既存の交通システムとの関連性のお話が興味深く感じました。
御社がいま検討されているのは、バスやタクシーの代替なのか、新しい領域なのかでいうと、どういうところを狙ってらっしゃるんでしょうか。

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西村さん
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朝倉さん

難しいところもあるのですが、UXの観点で言えば「オンデマンドで乗車できるタクシー」のようなものになっていくのではないかと考えています。
ただ、例えば今までは雨が降っても我慢してタクシーに乗っていなかったけれど、より安価で快適に移動できるのであれば乗ってもいい、というように新しい移動、新たな需要を創出できると思っています。

今は有人旅客という前提で最適化された交通システムができあがっています。これ自体は完成されたシステムですが、そこに新しい価格や今までにない乗り方、サービスが生まれてくることによって、利用者がその時々に最適な移動手段を選択できる、という考え方に変わってくるのではと思っています。

また、自動運転と有人の交通サービスどちらが優れているかという話ではなくて、こういったものを求める時にはやっぱりタクシーを使う、この経路だったらバスを使う、こういう時は自動運転サービスが便利、と利用シーンやニーズによって棲み分けられていくものだと考えています。

講演2
EasyMileについて

EasyMile社 Business Development Manager – Japan 毛利 勇人さんより、EasyMileの事業内容や提供ソリューションについてお話しいただきました。

Icon list red EasyMile概要

EasyMileは2014年フランス、トゥールーズで設立された自動運転のスタートアップ企業です。
世界で7拠点、22か国で自動運転のプロジェクトを稼働されており、欧州初の単体で日本に進出した自動運転ベンダーです。

独コンチネンタルが技術パートナーかつ出資者の協業関係で、EasyMileの自動運転車両「EZ10」や自動運転用ソフトウェア「Voyager(ボイジャー)」を用いてさまざまな研究開発をおこなっており、その結果を「EZ10」にフィードバックしてさらに改善するというサイクルを回しているそうです。

EasyMileは車両全体を自動化・自律化するためのレイヤーに位置しており、自律・自動に関するソフトウェア全般を開発し、車両メーカーと共に統合していく自律運転・自動運転専門のソフトウェアベンダーです。このため、EasyMileが独自に自動運転車両を製造しているわけではなく、さまざまな車両メーカーと手を組んで自動運転サービスを作っている会社であると説明いただきました。

Icon list red EasyMileのソリューションと提供価値

続いて、EasyMileの提供ソリューションについてお話しいただきました。

EasyMileのソフトウェアが実現する自動運転レベルはレベル4(L4)でありつつも、自動運転業界全体の安全のためにより確実性を重視して、まずはレベル3からスタートし、だんだんとレベル4化するような運用を行っているとのことです。

続けて、EasyMileの技術によりもたらされるメリットをお話しいただきました。

第一に安全です。フランスでも、交通事故で毎年多くの方が亡くなられています。自動運転を導入することで、ヒューマンエラーによる事故の削減が見込まれます。

次に費用対効果です。運転手は交通サービスの運用コストの50〜80%になるのではないかと言われており、この削減をEasyMileが支援できればと考えていると述べられました。

また、生産性として産業用車両の事例をお話しいただきました。
すでに成田空港などで産業用車両の導入支援を手掛けており、産業用車両メーカーと協力して自動運転の車両台数を増やしている段階だと言います。

さらにEasyMileのソフトウェアでは、既存の公共交通や倉庫管理システムなどと統合可能であり、その「柔軟性」について説かれました。
例えば遠隔操作やモニタリングの既存システムとの統合や、すでに走っているAGV(無人搬送車)と連動するように自動運転を走らせるといった共存運用も可能だということです。

続けて、自動運転サービスの展開における課題についてお話しいただきました。

自動運転全般の課題としてまず挙げられるのが「安全性」です。この安全性が全世界で競争領域に入ってくるのではと述べられました。
法規の整備も安全性が確立されない限りは難しく、もし事故が発生すれば自動運転の社会的受容性にも大きく悪影響を及ぼします。

最後に、EasyMileのフラッグシップ車両となるEZ10とソフトウェアのVoyagerについてご紹介いただきました。

EZ10は現在、フランス・オンコポール病院内で実際に走行しています。
人や物などの障害物を検知して常に停止するように設計されており、どのような飛び出しがあっても、また、どのようなものが来ても停止するという安全性を備えていると言います。
毛利さんも本社研修の際、自ら車両の前に飛び出して実際に車両が停止することを体感されたそうです。

また、搭載するソフトウェア・Voyager最新版では、障害物検知に人工知能技術を導入する計画も上がっているとのことです。

毛利さん

EasyMileが約束できることは4つあり、もっとも重要なのが、1つ目"安全に対する明確なプラン/ロードマップの提供と、明確にオペレーターなしで自動運転の提供を顧客に示すことができる"ことです。
全世界で100万キロ以上の無事故・無衝突の走行実績から得た経験と顧客とのタイアップが強みです。
常に顧客の意見を聞き、顧客の意見をもとに現場の調査報告書を作成します。作成の際には半年以上の時間をかけ、徹底して現場の安全確保に努めています。

Q&A

毛利さんとモデレーターの西村さんのQ&Aをいくつかご紹介します。

さきほど動画でもEZ10という車両を見せていただきましたが、御社では車両開発を全部やっているわけではなく、自動運転に関するソフトウェアの開発を主としてやられているんですよね。その、ソフトウェアの「Voyager」について、もう少し詳しく教えていただけますか。

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西村さん
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毛利さん

Voyagerは、おっしゃるとおり自動運転用ソフトウェアというものになりまして、自動運転を行うためのいわば心臓部となっています。ローカライゼーション(局地化・現地化)から安全停止、マッピングなど、自動運転に必要なすべての機能を備えた自動運転の心臓となるソフトウェアになります。

成田空港のお話について、成田空港には貨物輸送の有人の車両がもともとあって、それをいま自動化するという取り組みだというお話しだったかと思うのですが、そのなかでのEasyMileさんの立ち位置というか、提供されたソリューションというのを教えてください。

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西村さん
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毛利さん

成田空港で現在走っているのが「TractEasy(トラクトイージー)」という車両なのですが、その心臓部、自動運転に関する制御をすべてEasyMileが担っています。
また、車両製造メーカーや羽田空港側のいろいろなお悩みへのアドバイザーという立ち位置でも活動させていただいています。
自動運転のソフトウェアベンダーである以上、もし成田空港でソフトウェア的な不具合があれば、我々がすべて担う。そういった責任を持って改良、改善をしています。

講演3
BOLDLYについて

BOLDLY株式会社(以下、BOLDLY/旧:SBドライブ株式会社)代表取締役社長 兼 CEO 佐治 友基さんより、現在の同社の自動運転事業の展開状況についてご紹介いただきました。

Icon list red BOLDLYの事業概要

はじめに、BOLDLYの事業概要についてご紹介いただきました。

同社は2021年4月に旧社名「SB Drive」から現社名「BOLDLY」に変更。人手不足や減便・廃線などさまざまな交通における課題を、自動運転による高頻度循環、すなわち低速でも頻度が高い「太い(=BOLD)」交通網を実現することで解決することをミッションとされています。

車両開発自体は行っておらず、地域交通を見守り管理する交通事業者向けの自動運転管理システムの開発・提供が同社の事業ドメインだと言います。

すでに天空橋駅に直結する複合施設「HANEDA INNOVATION CITY」のなかで自動運転バスが運行されており、施設の中を"横に動くエレベーター”という位置づけで、老若男女問わずさまざまな方に利用されていることをご紹介いただきました。

Icon list red 自動運転の運行管理と実用化の事例

続いて、主力サービスである自動運転車両運行管理プラットフォーム「Dispatcher(ディスパッチャー)」と自動運転バスの実用事例をご共有いただきました。

BOLDLYでは2016年の立ち上げ以降、これまで国交省や内閣府などと多くの実証実験を実施。ハンドルの手放しや、Dispatcherを用いたドライバーレスの遠隔型運転実験などを行われてきました。

Dispatcherでは画像認識やAIといった技術により、乗客の動きや姿勢などから異常を検知、遠隔地で管理するドライバーにアラートを発出し、対処するための機能が搭載されています。
例えば、バス走行中に乗客が立ち上がって車内を移動してしまうなどの車内事故を誘発する状況や、乗客が降車中のバスの発車を防ぐなど、通常の有人バスでも起こりうるトラブルに遠隔で対処することができるそうです。

現在20タイプの自動運転車と接続しており、2020年度の自動運転バスの実証実験で使われた運行管理システムのうち、約半数がDispatcherを使用しているとのことでした。
また、これまで実施した実証実験は101回に上り、現在は前述のHANEDA INNOVATION CITYと茨城県境町の2箇所で実用化を実現されています。

茨城県境町では3台の自動運転バスを公道で走らせています。子どもからお年寄りまで、地域住民の方の日常生活で利用されており、地域のコミュニティのような役割も果たしているのだそうです。
また、バス停の位置も「うちの庭を使っていいよ」「この土地をバス停にしよう」など地域住民が自主的に協力しながら、自然に自動運転バスを使いこなしていると言います。

当初は街の中心部にある郵便局や病院などの主要拠点を循環する5kmのコースだったところ、地元の意見を取り入れながら医療センターやクリニック、レストラン、地域の多目的ホールなどもコースに組み込み、徐々に拡大しているとのことです。

BOLDLYは、Dispatcherの提供に加えて計画立案から関係各所への調整、現地での準備、実証実験、実導入、そしてアフターサポートまで、自動運転実装までの全プロセスを実行しながら、現地のメーカーやパートナーとともに実運用に取り組まれています。

さまざまなパートナーと連携することで、走行中の位置をセンチ単位で測定するGPS補正情報や、顔認証により人数計測ができるAIカメラ、冠水を検知するセンサーを設置して自動的に迂回ルートを設定する機能なども提供しています。
境町では、LINEから自動運転バスの予約受け付けから最適な配車をしていく仕組みもDispatcherで実現されており、高齢の方も若い方も自動運転を使いこなせているそうです。

Icon list red 自動運転の実用化に向けて

最後に、自動運転の実用化に向けた考え方や展望をお話しいただきました。

まず、自動運転の実用化とは、実際に「生活の役に立つこと」と、資金面なども含めて「持続可能であること」の2点であり、境町の実例のように、今の技術や法律、資金、環境でも実用化は十分可能だと述べられました。

自動運転サービスを持続可能なモデルにしていくために、BOLDLYでは「運賃脱却」を掲げています。

HANEDA INNOVATION CITYでは施設内のテナントの家賃の中に自動運転バスのコストも含めているそうです。また、今は補助金や自治体の予算を使っている境町でも、今後は沿線の店など受益者の予算で運用できるようにシフトしていくことで、運賃脱却型の持続可能なモデルを実現できるとの見解を述べられました。

佐治さん

自動運転は難しく考える必要はなくて、街の中を"横に動くエレベーター”だと表現しています。
運賃という移動のコストをなくすことで、移動が増え、行った先々で1,000円、2,000円と消費に繋がります。これによって、地域経済がもっともっと豊かになる。
人が移動すれば移動するほど、地域が豊かになる。そんな持続可能なモデルを今後作っていけるんじゃないかなと思っています。

Q&A

佐治さんとモデレーターの西村さんのQ&Aをいくつかご紹介します。

ご講演の中で自動運転実装、導入までの全体像をご説明いただきました。この全体像のなかで、やっぱりまだ課題だな、というポイントはあるのでしょうか?

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西村さん
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佐治さん

実はあまりないと思っています。日本の交通事業者の整備士さんや地域の自動車工場さんのメンテナンス技術はやはり非常に優秀で、『ちょっとECU(エンジン制御の装置)が壊れてしまったので交換してもらえますか?』とお願いしても、問題なく対応していただけます。また、保険会社さんも新たに保険を作ってくださっています。
優秀なベンダーさんがたくさんおられるので、新しいことをどんどんやりたいという自治体さんの要望に対しても、協力することで実現できると思います

それでは、自動運転社会はもう目の前ということですね。さきほどおっしゃっていた“横に動くエレベーター”というのはすごく面白い発想だなと思ったのですが、実際に羽田や境町で実現されていますし、これが今後いろいろな地域で展開される日が、もう目の前の、すぐそこに来ているという感じですね。

御社は自動運転車両の開発ではなく、車両の運行管理や車内外の監視システムが最重要な領域ですよね。
これがなかなか、いま自動運転に触れだしている方には伝わりづらいのかなと個人的に思っておりまして。
自動運転は特定のプレイヤーが全部をやるのではなくて、領域を切り分けてそれぞれ担われていて、例えばBOLDLYの場合はメインは運行管理のDispatcherである、というイメージでよいでしょうか。

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西村さん
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佐治さん

はい、おっしゃるとおりです。
地域の自動運転の安全を司る人は、地域の交通事業者だと私は思っています。その方々が必要とするシステム、例えば運行管理システムや車両に対してさまざまなニーズがあると思います。
車両だけでいっても、大型車、EV車、ガソリン車と複数のタイプが必要な場合、複数のメーカーから調達します。そこで、メーカーさん独自の運行管理システムも導入してA・B・Cと複数のシステムを全部覚えましょう、というのは無理な話なんですよね。

そこで、車両メーカーさんには車両の製造に専念いただいて、その管理システムは私たちが作るので、情報だけ受け渡しをお願いします、と連携するのがDispatcherになります。
車を作ってくれる方々の負担をどれだけ減らせるかが、自動運転社会を推進すると思っています。今はメーカーさんに負担がかかってしまっていると思うんですよね。
ちゃんとデータなどでメーカーさんもマネタイズができるようにフィードバックしていければ、自動運転社会もうまく回っていくんじゃないかな、と思っています。

講演4
自動車の自動運転の取り組み

国立大学法人 群馬大学 准教授 兼 次世代モビリティ社会実装研究センター・副センター長 小木津 武樹さんに、既存自動車の自動運転化についてご講演いただきました。

Icon list red 自動運転普及へのアプローチ

2016年12月に群馬大学で設立された次世代モビリティ社会実装研究センターでは、自動運転の社会実装モデルの研究開発を行われており、最近では日本モビリティ株式会社というスタートアップ企業を立ち上げ、業務拡大を進めています。

これまでの講演者の取り組みとは異なり、新しい自動運転車両を導入するのではなく、今ある旅客物流を自動運転に進化させていくというコンセプトがあり、既存の車両を自動運転化させていく技術をもとに、できるだけ低コストで持続可能なモデルにしてくことを目指していると述べられました。

群馬大学では、自動運転は小売、治安、防災、保険、観光、医療福祉など多業種からの参画があってこそより高い付加価値が生まれ、より使いやすい乗りものになっていくとして、他業種の自動運転化を重視。公的な研究機関の立場からさまざまな多業種の企業と連携し、技術相談や実証評価の支援など、多業種の自動運転化に取り組まれています。

2017年には群馬県前橋市の荒巻地域に自動運転システムの研究施設を開設。乗用車タイプからトラックタイプまで、当時 世界最大規模となる18台の試験車両を運用し、自動運転の社会実装に最適なモデルを集中的に研究開発していると言います。

群馬大学の研究開発の歩みは2016年から始まり、運転席に座って自動運転を動かしていた時代から徐々に高度化させ、2020年度には緑ナンバー(営業ナンバー)で無人・遠隔型の自動運転を走らせるまでに到達。現在は技術の高度化や今あるモデルの横展開に向けて進められているそうです。

群馬大学では独自開発の自動運転システムを用いて、これまで各地で60事例ほど、バス車両・乗用車両の自動運転化の実証実験を実施されています。

「今までの交通を進化させていく」という考え方のもと、すでに車両を保有している自動運転の検討企業・団体、例えば相鉄バスをはじめとする各地のバス会社や自治体、トラック関連会社、物流会社などに対して自動運転化のハードウェア・ソフトウェアを提供し、毎年各地で段階的に実証実験を進められています。

自動運転レベル4(L4)の実現は重要でありつつも、技術的な敷居が高く、導入環境が限定されてしまいます。
一方で、日本では便数や交通網の縮退といった交通課題が待ったなしの状況であり、まずはレベル4よりも導入環境が広げられる遠隔型の自動運転の実用化を進め、1人のオペレーターによって複数台の車両を運用できるコストメリットを出していく方針だと言います。

Icon list red 自動運転化システム・遠隔監視操作台

続いて、実際に提供している自動運転化のシステムについてご説明いただきました。

群馬大学が提供する遠隔型自動運転のシステムは、車両の天井部に各種センサーに加えて遠隔監視用のカメラやマイクを設置し、遠隔にある監視システム「遠隔監視操作台」から車両を運用する形です。
2020年、国内で初めて遠隔型自動運転・運転席無人状態での営業バス車両の営業運行を実現されました。

自動運転の実証実験は、単に成功させるためだけの技術パフォーマンスではなく、社会への本格導入後の持続可能なモデルを構築することが主目的です。
群馬大学では、それは本当に自動運転が最適なのか、まずはしっかりと調査分析を行い、その妥当性の検証としての実証実験を実施するOODAサイクル(OODAループ)を各地の実証実験に適用するべく、自治体や交通事業者と取り組みを進めていると述べられました。

最後に、自動運転の取り組み事例として、前橋市の事例をご紹介いただきました。

群馬大学と前橋市とは3年前から積極的に自動運転実装の取り組みを推進されており、毎年実証実験を行っています。
現在はJR前橋駅から中央前橋駅までのルートで、技術的には自動運転率をほぼ100%で運用できる状態まで進んでおり、そのリスク分析と対策の検討を行っていると言います。

リスク対策としては、自動運転の技術を高めるだけではコストがかかりすぎてしまうことから、群馬大学では道路側にさまざまなセンサーやカメラを設置して、その情報を管制室や自動運転システムに取り入れ、道路側と協調してうまく安全に運行できるようなシステムにしていくというアプローチです。

小木津さん

ドライバー不足という問題に対して補充、補填するための自動運転であり、運用コストも減らすというのが重要なポイントだと考えています。
群馬大学や日本モビリティ社では自動運転の導入や街づくりの計画、自動運転システムとサービス提供など、コンサルタントからシステム提供までを一気通貫して、極力コストを抑えた運用をやってきたという実績があります。
もちろん他社様との連携も進めつつ、なるべくコストを上げないよう常に配慮しながら、自動運転の本質的なメリットを得られるビジネスモデルを引き続き研究開発してまいります

Q&A

小木津さんとモデレーターの西村さんのQ&Aをいくつかご紹介します。

ホンダさんやEasyMileさんのお話にあったような新しい自動運転車両ではなく“既存の車両を自動運転化する”ということ。また、自動運転という言葉を“運転席無人のサービス” ということに置き換えて今展開されている、というところが非常に印象的でした。

私どももバス会社が多くありまして、例えば今10台運転しているところで10人のドライバーが必要なところ、自動運転化で1人が2台運転すれば5人に減らせるということで、人件費的にとても楽になりますよね。そういうアプローチは非常に魅力的でした。

そういう意味では、自動運転を運転席無人のサービスと捉えた時に、現状の混合交通で、既成の市街地、かつ固定ルートの既存バス路線を対象にして実用化するのは、小木津先生はどの程度の期間が必要だと思いますか?

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西村さん
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小木津さん

よくいただく質問の1つなのですが、この場ではっきりとお答えすることは難しいですね。
その地域ごとの状態を見定めて、しっかりとリスク分析を行ってからお答えするように私どもはしています。

自動運転に対する親和性の高い地域・路線であれば、今すぐにでも導入できると思います。反対に、自動運転では走行しにくいルートであれば、車側の技術の向上を待つか、あるいは道路側を整備して補助することで解決する必要があると思います。
そこで、私たちがこれまで実施してきた約60の実証実験や事例によって得られた知見を活かして、各自治体様や交通事業者様に最適なモデルをご提案させていただいています

小木津先生は自動運転の技術の研究者でいらっしゃると思うんですが、今の日本の道路空間で、例えばトンネルやビルの間でGPSが入りにくい場所など、自動運転におけるさまざまなマイナス要因が存在しますが、今、自動運転を実現させる際の都市側、都市装置施設側の問題というのはどういったものがあるのでしょうか?

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西村さん
Icon gunmadai ogitsu
小木津さん

やはり、そういった問題を考える時に必要なのは、その地域でどのような要件が求められているのかが大事になってくると思います。
例えば、我々は自動運転を時速20~30kmで走らせているのですが、最初に出てくるのは『もっと速くならないのか?』というご意見です。これをそのまま受け取ると、速度を上げるためにその分リスクを下げたルートに変更する必要があります。
このルートのリスクを下げるというのは、西村さんがおっしゃっていたようにビルに遮蔽されてGPSが取得できないような箇所であればそれを補助するためのラインマーカーを引くなどの対応で信頼性を上げていく必要があります。
また、走行速度が速くなるほど歩行者の飛び出しに対する対応も難しくなりますので、それが発生しにくくなる環境を作らなければなりません。
当然自動運転システムの質の向上も必要ですが、それだけではなく、多角的な視野で見ていくことが重要だと考えています。

参加者アンケートより

自動運転はサービスであるという観点、「横に動くエレベーター」や「運転席無人のサービス」という表現をされていたことが大変印象的でした。

コンサルティング会社の方

自動運転は代替ではなく、新たなツールとして既存のサービスと共存、選択肢の1つに組み込まれていくことが重要。4名のお話を聞き、自動運転が日常のサービスとして展開される日も遠くないのだと感じました。世界の潮流に取り残されることがないよう、取組を推進していく必要があると再確認しました。

自治体の方

実際に事業へ取り組まれた方から伺う話には実感力・説得力があり、資料・文献等では得られない深い理解が得られると感じています。毎回興味深いうお話を提供いただき非常に感謝しています。

コンサルティング会社の方

最後に

改めまして、参加者の皆さま、ご講演くださった朝倉様、毛利様、佐治様、小木津様、そして進行くださった西村様に深くお礼申し上げます。誠にありがとうございました!

モビリティピッチは今後もモビリティに関わる実務者の方々からのよりリアルな状況をお話しいただき、気づきを与えあえるコミュニティ作りを目指します。

2021年度は春・夏・秋・冬のシーズンごとにウェブセミナー形式で開催します。
皆さまのご参加をお待ちしております!

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