マイクロモビリティの展開

モビリティピッチは、MaaSに真剣に取り組む方のための情報共有のイベントです。
小田急電鉄とヴァル研究所が共催し、MaaSの実務者が語る正しい情報や具体的な取り組み、課題の共有と、気づきを与えあえる場・コミュニティ作りを目指します。

第4回ではシェアサイクル、電動車いす、電動キックボードといったマイクロモビリティのサービスを展開する4名に講演いただきました。
モデレーターは小田急電鉄・次世代モビリティチーム リーダーの西村 潤也さんです。

おひとり15分という短い中で、濃縮したさまざまな情報や事例を共有いただきました。
いくつかのトピックスを抜粋してご紹介します。

※実際のセミナーでは詳細なデータ等もご紹介いただきましたが、本レポートでは割愛している箇所がございます。

プログラム

※講演者のご所属、お役職は掲載時点(2021年10月時点)のものです。

講演1
マイクロモビリティの展開について

マイクロモビリティの展開について 2021年8月26日 株式会社ドコモ・バイクシェア

株式会社ドコモ・バイクシェア(以下、ドコモ・バイクシェア)取締役 清水 貴司さんより、MaaSとマイクロモビリティの関係性や同社の実際の取り組み内容について講演いただきました。

Icon list red MaaSとマイクロモビリティの関係

はじめに、ドコモ・バイクシェアが考えるMaaSとマイクロモビリティがどのような関係にあるべきかについてご説明いただきました。

MaaSとマイクロモビリティの関係

さまざまな目的や課題解決を達成する手段であるMaaSは、多様なサービスとのシームレスな連携が重要です。MaaSとモビリティがうまく連携していなければ、移動しやすさの向上や観光促進など、本来やりたかったことができなくなる恐れがあります。

そのために共通して目指すべきことが「地域交通の最適化」であり、マイクロモビリティの活用は、それが地域交通の課題解決につながらなければやる意味が薄れていくと述べられました。

Icon list red 全国の展開状況

続いて、前述を踏まえたうえでのドコモ・バイクシェアの事業展開状況をご紹介いただきました。

全国の展開状況

地域としては、北は北海道から南は沖縄まで展開されており、コロナ禍においても利用回数は2割程度伸びていると言います。

1ポートあたりの車両台数に換算すると現状8台強ですが、地域交通という観点ではある程度の物量が必要になるため、1ポートあたりは10台停められる大きさが目安になるとのことです。
また、ドコモ・バイクシェアと自治体とが共同事業の形で提供するケースが主流でありつつ、長野県の上田市、千曲市のように、昨今は自治体同士が連携して共同でシェアサイクルを提供するケースもあることをご紹介いただきました。

Icon list red 連携パートナーの拡大

続いて、連携パートナーの拡大状況についてご説明いただきました。

連携パートナーの拡大

ドコモ・バイクシェアはもともと自社のアプリとプラットフォーム、シェアサイクルを各都市に導入していく形が主だったそう。
しかしここ数年では、札幌「ポロクル」や金沢「まちのり」、名古屋「カリテコバイク」など、もともとシェアサイクルを展開していた事業者がシステムを変更する際や、新たにシェアサイクルを導入する際にドコモ・バイクシェアの基盤を活用するケースが増えていると言います。
また、2020年からMaaSアプリやMaaSプラットフォームとのAPI連携により、他社のアプリやプラットフォームを通じてドコモ・バイクシェアが利用されるケースも増えてきているそうです。

API連携事例として、MaaS Global社のMaaSアプリ「Whim」が三井不動産とマンション住民向けにおこなった不動産×MaaSでの活用例をご紹介いただきました。

実証実験は、2020年12月に日本橋エリアや豊洲エリアにおいて、街や住宅の魅力向上を目指したもので、マンション住民向けに複数交通機関のサブスクリプションサービスを提供するというものです。

連携事例① Whim(三井不動産・MaaS Global)

街なかにある一般向けのサービスとは別に実証実験エリアのマンション専用のドコモ・バイクシェアを提供。その予約や決済はすべてWhim上でおこなわれ、料金もWhimのサブスクリプションのなかに組み込まれる形です。

シェアサイクル、カーシェア、タクシーという複数の移動手段を1つのサービスとして購入・利用できるため、例えば晴れている日はシェアサイクルで、雨で荷物が多い日はタクシーを、とその時々で自由に好みの移動手段を選ぶことができます。

Icon list red シェアリングプラットフォーム用新型アタッチメント

ひるがえって、モビリティ機器についてお話しいただきました。
はじめに、新たに開発されたシェアリングプラットフォーム用の新型アタッチメントをご紹介いただきました。

シェアリングプラットフォーム用新型アタッチメントについて

従来のアタッチメントは自転車専用に開発されたもので、他のモビリティへの搭載はハードルが高いものでした。
そこで新たに開発されたアタッチメントでは、まず直感的に操作できるようにするために操作性を改善し、メンテナンスしやすい構造を採用。また、自転車以外の電動モビリティで使用する場合は、アタッチメント上部の制御部からモビリティの電源をオン・オフするだけで制御できるようにされたとのことです。

続けて、このアタッチメントの活用事例を3つご紹介いただきました。

1つ目はアイシン社の、大型商業施設内での利用を想定した免許不要のマイクロモビリティ「ILY-Ai(アイリーエーアイ)」での活用例です。

連携事例② ILY-Ai(アイシン)

商業施設内のサービスは有人のインフォメーションカウンターで手続きをしてから利用できるケースが多くありますが、本来サービスは商業施設に入ったその時その場所から受けられることが望ましくあります。
そこで、ILY-Aiにアタッチメントを搭載し、商業施設内に複数の無人の拠点を設けることで、利用者はわざわざインフォメーションカウンターに行くことなく、ドコモ・バイクシェアアプリ上で貸出・返却できる環境を提供されました。

2つ目は愛知県春日井市で展開されている電動三輪モビリティ「Digital Mobility GOGO!シェア」での活用例です。
分類としては「ミニカー」のため普通免許が必要でありつつ、ヘルメット不要のマイクロモビリティとなっています。

連携事例③ デジタルモビリティGOGO!シェア(Future・かすがいGOGO)

地元応援、地産地消などの地域活性化を目指した事業として、デリバリーや店舗予約ができるアプリ「かすがいGOGO」のなかのいちサービスとして提供され、日常生活における移動に加えてグルメや食料品などのデリバリー時にも活発に利用されています。

3つ目は非電動のレンタサイクル「スマート駅リンくん」での活用例です。

連携事例④ スマート駅リンくん(JR西日本レンタカー&リース)

有人窓口での貸出をおこなうレンタサイクルは、さまざまなサービスをデジタルでシームレスにつなごうとするMaaSにおける連携が難しいという課題があります。しかし、MaaS実現のためにわざわざ乗り物すべてを買い替えるというも現実的でありません。
そこで、既存の資産を有効活用するために検討されたケースが「スマート駅リンくん」です。
2021年7月からJR西日本の西明石駅で実証実験が始められており、非電動の自転車でありながら、アタッチメントを追加することでドコモ・バイクシェア アプリから予約や決済をワンストップでおこなえるようになった事例です。

清水さん

このように既存の資産などを活用しながら、どのように地域交通の最適化を図っていくかという思想のもとに事業展開をおこなっており、今後もその思想で拡大し続けていきたいと考えております。

Q&A

清水さんとモデレーターの西村さんのQ&Aをいくつかご紹介します。

2017年頃に海外からシェアサイクルサービスが参入して一気にシェアサイクルが話題になったことがありましたが、ドコモ・バイクシェアはそれ以前から、それこそ「MaaS」という言葉が出る前から丁寧に事業を展開されていらっしゃる印象を持っています。

シェアサイクルサービス事業は自転車というアセットと、自転車の再配置の作業などさまざまなコストが発生するかと思います。
一方で、利用者は1回数百円程度で利用することができます。そうなると、実際のところの収益性や、自治体さんが導入する場合どのくらいの経済効果や負担が見込まれるのかなど、教えていただけますか。

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西村さん
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清水さん

おかげさまで2020年度ようやく黒字化を達成しまして、全体の収支としては成立しています。
ただ、黒字化しているところとそうでないところがあり、黒字化しているところはやはりある程度 地域交通として定着しているところです。
2020年度の利用回数が約1,460万回だったのですが、大体で平均すると1台の自転車が1日3回ほど使われているという計算になります。これくらい使われる地域であれば、自転車の需要に対応する再配置をしたとしてもある程度の収入が得られる状況になっています。

一方で、全部黒字じゃないとダメなのかというと、必ずしもそうでもありません。
例えば別の事業を営んでいて、それをやるよりは少ないコスト負担でシェアサイクルができるため、地域住民の方の足としてシェアサイクルを導入する、というケースもあります。
その辺りはやはり導入の目的により考え方も違ってくるのかなと思います。

ありがとうございます。回転数は場所により異なるということですね。
多くの提供、利用で集まったデータを活かす、という点はいかがでしょうか。

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西村さん
Icon dbs shimizu
清水さん

データに関してはまだまだ連携の余地があると思っています。
私たちが持っているデータだけ見てもシェアサイクルの動きしかわからないので、他の移動手段とあわせ、地域全体のなかでそれぞれの移動手段がどのように分担されているかを考えていく必要があると考えています。

例えば、我々で言うところの「再配置」やほかの交通事業者さんの「回送」など、よくよく見たら同じようなことがおこなわれています。ただ、我々は再配置したいわけではないし、ほかの交通事業者さんも同様だと思います。そこで双方が協力して再配置や回送を減らせれば、地域の交通全体としてのコスト削減や利便性向上を目指せると思います。
こういった街づくりの観点も含めたデータ連携が今後必要になっていくのかなと考えています。

講演2
移動の変化とマルチモビリティシェア

移動の変化とマルチモビリティシェア 2021年8月26日 OpenStreet株式会社

OpenStreet株式会社(以下、OpenStreet)代表取締役社長 CEO 工藤 智彰さんより、データサイエンス観点からの移動傾向の変化やモビリティごとの違いなどについてご講演いただきました。

Icon list red 事業のご紹介

ソフトバンクグループであるOpenStreetは、「都市のオペレーションシステム(OS)になること」、そして「移動を変えることで都市を変える」ことを企業ビジョンに掲げ、シェアサイクルのHELLO CYCLINGをはじめ、スクーターや小型EVのシェア、駐車スペースシェアなどのサービスと、スマートシティ領域のサービスも提供しています。

事業概要

最終的には、「マイクロモビリティステーション」という、その場所に行けばさまざまなEVに乗車でき、次世代エネルギーによる給電もできるような拠点を街中に作り、自由な移動とEVシフトを進めていくことを目指していると述べられました。

マイクロモビリティステーション構想

OpenStreetはシステムのプラットフォーマーという立ち位置で、各地域でさまざまな運営事業者や自治体とのパートナシップで事業を進められています。

シェアサイクルのHELLO CYCLINGにおいては、2021年7月時点で約59の自治体と協定を結び、官民連携で公用地と民間用地をうまく組み合わせてポートを増やす戦略で進めていると言います。

官民連携によるインフラ整備

展開エリアは初期の3都市から現在200都市まで拡大。さまざまな株主も加わり事業シナジーを創出されています。

Icon list red HELLO CYCLINGについて

続いて、HELLO CYCLINGのプラットフォームについてご説明いただきました。

HELLO CYCLINGは、アプリと自電車をつなぎ込むためのIoTとシステムを提供するシェアサイクル専用のプラットフォームです。現在首都圏には約3,000カ所のステーション(自転車貸出・返却拠点)があります。

交通ネットワークとしての発展例

ある自治体では、官民連携による公用地と民間用地の組み合わせによる利便性の向上で、利用回数が10倍以上になるという効果を生み出していると言います。
また、当初はレンタサイクルのようにA地点で借りてA地点に返すという使われ方が主だったところ、公用地と民間用地の組み合わせで各ステーションが接続された結果、街の中に縦に走る鉄道に、HELLO CYCLINGが横の移動を補完する手段へと発展した事例をご紹介いただきました。

移動データを活用した分析・都市政策への活用

利用が進むと同時に蓄積される利用データをもとに分析された、実際に走っている自転車の量やスピードなどは、自転車専用道路などの整備検討や都市づくりにも活用されていると言います。

Icon list red 移動と変化のモビリティシェア

続いて、実際の移動データや調査データに基づいたコロナ禍による移動の変化についてお話しいただきました。

コロナ禍におけるシェアサイクル利用状況 -緊急事態宣言 第1回・第2回の比較-

HELLO CYCLINGの利用自体は伸びており、緊急事態宣言も2回目以降ではあまり変化がなく、直近1年半ほどでむしろ利用回数・時間とも増加。一方で、利用目的には大きく変化があったそうです。

利用傾向の変化

通勤・通学目的は総量自体は増えつつも、比率が減少。代わりに、レジャー目的やビジネス目的での利用の比率が増加しています。

また、従来は朝と夕方で駅とオフィス街間での行き来が多く発生し、通勤・通学におけるファーストワンマイル・ラストワンマイルを補完する、公共交通の末端としての使われ方が主でした。
感染症流行後は買い物などの日常利用によるランダムな移動が増え、これまで一点集中で駅などに集まっていたところが、分散的な使われ方への変化がみられています。

移動傾向の変化

また、飲食などのデリバリー目的による利用も増えており、このように目的地や利用の仕方が多様化し、長時間利用、周遊的利用が顕著に増えているのが最近の傾向だと言います。
この状況変化にともない、OpenStreetがいま試されているのが「モビリティの多様化」です。

Icon list red モビリティの多様化について

続いて、HELLO CYCLINGのプラットフォームについてご説明いただきました。

e-BIKEのシェアリング(湘南エリア)

モビリティの多様化の一例として、湘南エリアにおいて江ノ島電鉄と共同で展開している「e-BIKE」をご紹介いただきました。e-BIKEは通常の電動アシスト自転車よりも走行パワーが大きくあり、乗ること自体を楽しめるようなモビリティです。

かなり長距離かつ長時間の利用が多くあり、事業的な視点で考えると利用単価が高くリピートユーザー比率も高いため、車体などの初期費用は高くなるもののビジネスとしては面白い領域であると考え、現在テストしている段階だそうです。

続けて、国土交通省の公募事業・スマートシティモデルプロジェクトにおけるさいたま市の事例をご紹介いただきました。

さいたま市スマートシティモデルプロジェクト

シェアサイクルとスクーターに加えて、最大4人まで乗れるコンパクトな小型EV「Fomm(フォム)」を導入。この3つのモビリティを1つの場所で貸出/返却できる「マルチモビリティポート」を市街地に複数配備しています。

マルチモビリティポートの設置

実際に使われているデータを見ると、基本的に小型EVの場合でも短距離移動がほとんどである一方、移動の多様化にともなって「2人で乗りたい」「子供を送迎したい」「荷物を運びたい」「雨に濡れたくない」など、自転車では対応できないさまざまなニーズを徐々に捉えていくことができるのではと述べられました。

工藤さん

短距離、中距離、長距離、そしてEV化を視野に入れてさまざまなテストをおこなっています。技術的にあらゆる乗りものを繋ぐことは難しくなくなっていますので、市場ニーズに合わせて必要な乗りものを順次投入していくことで移動の変化に対応していけるのではと思っています。
また、さまざまなデータを見て思うのは、いま移動が制限されているなかでも、移動そのものが楽しいということもあるのかなと実感しております。利用者の方に楽しんでいただける移動、乗りものを提供していけるよう、利用者の笑顔を作れるよう今後も取り組んでまいります。

Q&A

工藤さんとモデレーターの西村さんのQ&Aをいくつかご紹介します。

実は先日、先ほどご紹介のあった江ノ電がやっているe-BIKE KUROADに乗らせてもらう機会がありました。あれは自転車というか、すごい乗りものだと思います。湘南の海沿いを走ると、バイクでもない自転車でもない独特の爽快感があり、また、操作性が通常の自転車とまったく異なりますね。非常に良い、笑顔になれる体験をさせていただきました。

ご質問なんですけれども、さきほどご講演のドコモ・バイクシェアさんと異なり、御社はシェアサイクル事業というより、プラットフォームビジネスとして展開されているかと思いますが、その辺りの違いを改めてご説明いただけますか。

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西村さん
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工藤さん

一部直営としてシェアバイク事業もおこなっているのですが、おっしゃる通り基本的には我々はプラットフォーマーとしてサービスを提供しています。
具体的には、各地域でシェアサイクルサービスを運営したいという事業者様に対して、自転車をシェアサイクル化できるIoTツールとアプリケーションシステムを提供するという形です。
ただ、エンドユーザーから見ると「HELLO CYCLING」というアプリでいろいろな自転車に乗れる、という形になっています。

ありがとうございます。ドコモ・バイクシェアさんの場合は各地域にIDがあって、それを各地域で連携しあっている形ですが、OpenStreetさんの場合はIDは共通で、1つのプラットフォームで、各事業者さんがシェアサイクル事業をしたい時にプラットフォームやシステムを提供する、ということですね。

また、自転車だけではなく小型EVや電動キックボードなど次世代モビリティのお話もありましたが、どこまでが御社の領域とお考えでしょうか。構想も含めて教えていただきたいです。

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西村さん
Icon os kudo
工藤さん

そうですね、小型EVシェアリングなどをやっていている中で見えているのは、やはりバッテリーマネジメントがモビリティシェアにとって必須の領域ではないかということです。
バッテリーパックを交換したり、モバイルバッテリーのように貸し出したりするなど、方法はさまざまなものが考えられますが、恐らく電源の供給、バッテリーシェアも当社が取り組むべき領域ではないかと考えています。

講演3
WHILL Design your own road

WHILL Design your own road

WHILL株式会社(以下、WHILL)取締役 CTO福岡 宗明さんに、WHILLのご紹介とWHILLにとってのMaaSとはどのようなものかをご講演いただきました。

Icon list red 会社・事業紹介

はじめに、WHILLの会社とサービスの概要をお話しいただきました。

Mission 全ての人の移動を楽しくスマートにする

WHILLはもともと「100m先のコンビニに行くのをあきらめる」という車いすユーザーの言葉から立ち上がった会社で、「すべての人の移動を楽しくスマートにする」ことをミッションに掲げ、走れる人から歩行に困難を抱える方まで、すべての人の移動を楽しくスマートにしてくことを目指しています。

精神的なバリア・物理的なバリア

外出を諦めてしまうのは、坂や段差などの物理的な原因が主なものだと当初考えていたところ、よくよくユーザーをヒアリングをすると、「車いすに乗って出かけたくない」など精神的な問題が根本にあると感じられたそうです。
そこで「シンプルにすごくかっこいい車いすを作ればみんな乗ってくれるのではないか」という発想で、次世代電動車いす「WHILL」が誕生しました。

whill Model C2

現在の主力製品は「Model C2」。デザイン性はもちろん、前輪にユニークなタイヤを搭載し、屋外では段差をしっかりと越え、屋内では小回りが利く自由度の高い乗り物になっていると述べられました。

WHILLの描く世界観は素敵な動画でご紹介いただきました。

WHILLでは、車いすのイメージをもっと、よりポジティブなものに変えていきたいと考えられています。

whill Model C2

例えばメガネは昔、視力の矯正器具としてネガティブなイメージとしてとらえられていました。しかし、そこからおしゃれなファッションアイテムとしてポジティブに利用されるケースが増え、さらに現在ではARやVRといった技術を備えた最先端のアイテムに変わりつつあります。

WHILLにおいても同じような経緯を辿り、さらにそれを超えるために始められたのが、次の動画のような自動運転サービスだと言います。
国内においてもすでに羽田空港や慶応大学病院などで正式なサービスとして運用されているものです。

Icon list red WHILLにとってのMaaS

続けて、WHILLにとってのMaaSの考え方をお話しいただきました。

WHILLにとってのMaaS

WHILLにとってのMaaSは、自動運転サービスとシェアリングサービスの2つの形で展開していけるのでは、と考えられているそうです。
自動運転サービスは空港や病院などがサービス提供者となり、車体の状態を遠隔管理できるハイスペックなサービスです。一方、シェアリングサービスは現在一般販売しているモデルをアプリからシンプルに管理・利用できるサービスモデルです。

WHILLにとってのMaaS

自動運転サービスは、まずは今すでに車椅子を補助する職員の方が不足して困っている空港や病院などをメインターゲットに展開し、次のフェーズとして街や商業施設など、今 車いすサポートがない領域もターゲットに含めていくと言います。

また、シェアリングサービスはまずはWHILLが単独で始めて、連携を進めていく計画だそうです。無印良品と連携して実施している実証実験などから、特に高齢者の方にいかにスムーズに利用していただくか、アプリや電動車いすのUI・UX上の課題を乗り越える必要があると述べられました。

WHILL whill be one of mobility infrastructure
福岡さん

多くの方にしっかり使っていただけるサービスにするには、どのようなインターフェースでどう提供すれば良いかなど、まずはWHILL単独で丁寧に試行錯誤しながら、その結果をもとに今日いらっしゃっている事業者のみなさまと連携していければと。
また、最終的には電車、タクシー、バス、そしてWHILL、のような交通インフラのひとつとなっていくことを目指していければと考えています。

Q&A

福岡さんとモデレータの西村さんのQ&Aをいくつかご紹介します。

WHILLは私はもう何回も乗らせていただいて、加速性がありつつも不安を感じることがないほどスムーズに操作できますし、サスペンションが良いのでしょうか、どんな段差も難なく移動したりその場で回転したりもできて。
江の島の実証実験で、普段あまり外出をされないご高齢の方にWHILLを使っていただいたのですが、はじめはとても怖がられていて、でも操作を教えて動き出すととても喜ばれていて。「久々に海の風を感じられた」とおっしゃっていたのが印象的でした。

WHILLの今後の展開に関して、特に自動運転サービスについて、私なりには美術館などの施設内移動が必要なところが今後のターゲットとなるのではと思っているのですが、福岡さんとしてはどのようなイメージをされているのでしょうか。

Icon odk nishimura
西村さん
Icon whill fukuoka
福岡さん

病院、空港がメインターゲットとだと書いた理由は明確にありまして、「車いすをサポートしている職員がいるかどうか」が大きなポイントなんです。
今まさに車いすのサポートに人的コストがかかっているので、自動運転タイプならそれを代替することができます。その場に人が付いていなくてもよくなる、という非常に分かりやすいメリットを提示することができます。

それに対して美術館などでは、たしかに車いすユーザーのニーズはあるのですが、車いすサポートが提供されていないことが多く、そのような施設の場合は自動運転タイプのWHILLを入れることのコストの方が大きくなってしまい、導入はうまくいきません。
そこで、まずは現状で車いすサポートをされている病院や空港などへの提供で知見を貯めて、そのあとに美術館などの施設への展開を検討していくのが妥当な案と考えています。

シェアリングサービスのお話もありましたが、例えば自転車に乗ったことがない人に自転車をおすすめしてもなかなか乗っていただけないのと同じで、WHILLに乗ったことがない方に「さあ乗っていください」と促しても、なかなか使い方もわからず利用されないと思います。
ただ、例えば商業施設や美術館、ホテルなど、有人の受付がある施設において、簡単にご案内できればスムーズに利用できるのかなと思ったのですが、まずはサービスの認知のほうが先の取り組みなのでしょうか。

Icon odk nishimura
西村さん
Icon whill fukuoka
福岡さん

アメリカではこういったサービスは多くあってユーザーもすごく多いのですが、日本ではまだこれからなので、まずは認知を広げたいですね。

また、有人の受付がある施設においてはおっしゃるとおりだと思います。
ただ、例えばメールアドレスを持っておられない方もおられるので、その場合の会員登録をどうするのか、など細かいことも考慮する必要があります。「高齢者とのサービスの親和性」のようなところが1つのキーワードになってくるのかなと思っています。

講演4
BRJのご紹介
業界リーダーBIRDが提供する次世代型移動サービス

BRJのご紹介 業界リーダーBIRDが提供する次世代型移動サービス

BRJ株式会社(以下、BRJ)代表取締役 CEO 宮内 秀明さんに、BRJのご紹介と電動キックボードのシェアリングサービス「Bird」についてご講演いただきました。

Icon list red BRJについて

はじめにBRJについてご紹介いただきました。

BRJ概要

近年日本国内でも話題となっている電動キックボードは、海外ではは3密を避けて移動できる“公共交通”として2年ほど前から加速度的に市場拡大しているマイクロモビリティです。
BRJは業界No.1のマイクロモビリティサービス「Bird」を日本で本格展開していく会社として2020年12月設立されたスタートアップ企業です。

電動キックボードといえば、回遊性や観光利便性が注目されることが多くありますが、BRJでは公共交通の一助として考え、「安全・安心」をもっとも重要視していると言います。
地元に根付いたサービスとして、住民の方の利便性向上のため自治体や地元の方とじっくりと対話しながらビジネス展開を進める意向です。

Icon list red 電動キックボード事業を展開する背景と意義

続いて、電動キックボード事業を展開する背景とその意義について説明がありました。

背景と意義①

1つ目はヒト・モノの移動が大変革を迎えつつあることです。
宇宙開発ビジネスの発展や、新幹線やリニアの先のハイパーループ、空飛ぶ自動車の実用化などさまざまな変革の波が迫ってきています。
このような変革により、道路や街づくりも少しずつ変わっていきながら、移動・運送手段の混合が今後加速されていくのではないか、との見解を述べられました。

背景と意義②

2つ目は経済活動の一極集中から自立型ローカル経済への発展傾向です。コロナの影響もありつつ、交通や流通と地方課題が融合し、暮らしが変わっていくことで二次交通の発展も求められるのではないかと言います。
こうした背景から、変わりゆく移動の課題解決をおこなう手段のひとつとして、電動キックボード事業に着手されました。

Icon list red 事業概要

次に、電動キックボード事業の概要をご紹介いただきました。

Birdのサービスは、シェアサイクルと同じようにアプリを使ってロックを解除し、好きなところまで移動して乗り捨てできる、街中でのシェアリングモデルです。
世界的に加速度的に成長中で、日本国内市場規模はマッキンゼーの調査などによるとおおよそ2兆円になると言われており、これは全国の路線バスの市場規模と同等になるのだそうです。

続けて、テクノロジー・オペレーション・自治体開拓・規制緩和という事業の重要成功要因4点についてお話しいただきました。
テクノロジーと自治体開拓は、BIRDを提供するBird Rides社が業界No.1の実績を持っています。

BIRDの特徴的なテクノロジーとして、複数のなかから2点ご紹介いただきました。
1つ目は、機体ごと、エリアごとに遠隔で速度や走行不可エリアの設定を行うことができる、安全性を担保した技術です。

2つ目は、データドリブンな地域活性化や計画立案をおこなうためのダッシュボード機能です。

この他にも、自動緊急ブレーキや緩やかな加速設定などの安全配慮機能や、配置予測機能、車両不備検知センサーなど事業運営を支援する機能を備えていると言います。

続けて、重要成功要因の2点目・自治体開拓の重要性についてお話しいただきました。

シェアリングビジネスという経済性と移動課題の解決の双方を成立させるためには、ターゲットは人口密度の高いエリアでも低いエリアでもなく、レジデンスエリアになるそうです。
具体的には、関東におけるベッドタウンといわれる立川やさいたま、所沢、流山、柏、千葉などのドーナッツエリアや、都内では江東区や墨田区、江戸川区などがそれにあたり、こういったエリアにおいて非常にうまくいっている状態であると述べられました。

続けて、重要成功要因の3点目・オペレーションについてお話しいただきました。

どのようなサービスでも、安全・安心なサービスのためにはオペレーションがポイントです。
機体回収から充電、メンテナンス、そして再配置までのオペレーションをいかに精度高く回していくかも肝になると言います。

続けて、重要成功要因の4点目・規制緩和について見解を述べられました。

規制緩和は外的要因ではありますが、非常に重要なファクターです。
電動キックボードは現在 原付扱いのため同等の規制がかかっていますが、国の方向性としては1年、2年、3年と時間をかけて徐々に規制緩和されていくと見られています。

Icon list red 電動キックボードのメリット

最後に、Birdの導入によりもたらされるメリットについてご紹介いただきました。

メリットの1つとして、小規模店舗の売上が上がるという効果があります。バスだと通り過ぎてしまうような場所でも、電動キックボードであれば気になるお店に気軽に立ち寄ったり、少し寄り道したりすることができ、そこで購買が生まれます。
Birdのポートがコンビニや商店にあれば、移動のついでに買物をしていくことで小規模店舗の売上向上に貢献することが期待できます。

また、自転車屋や新聞配達店など、地元の企業に電動キックボードのメンテナンスや充電などを任せることで、地元企業の新しい売上や雇用を生み出すことができます。

宮内さん

これからは、さまざまな業界の企業との協業を進めていくフェーズになります。特に小売やデベロッパー、都市開発などとの連携を進めさせていただく予定です。
また、安全・安心を一番に考えて誠実にサービスを構築してまいりますので、みなさまお力添えのほどよろしくお願いいたします。

Q&A

宮内さんとモデレーターの西村さんのQ&Aをいくつかご紹介します。

2017年に立ち上げで、もう200地域以上で運用されていて、利用者も1,000万人超と目覚ましいスピードでスケールしているBirdが日本にやってくる、ということで本当に楽しみにしているのですが、実際日本ではいつごろから乗れるようになるでしょうか。

Icon odk nishimura
西村さん
Icon brj miyauchi
宮内さん

ありがとうございます。
日本では、2021年9月末から10月初めにかけて、東京の立川市からスタートする予定ですので、もうまもなく乗れるようになります。

もう目の前なのですね、ありがとうございます。
また、さきほど地元企業とも協力して事業展開するというお話でしたが、BRJさんはプラットフォーマーなのか、それとも直接マイクロモビリティ事業を展開されるのか、どちらの立ち位置になるのでしょうか。

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西村さん
Icon brj miyauchi
宮内さん

米国本社と当社との関係性でいうと、“プラットフォームパートナー”という形でブランドのライセンシーを当社が所有している状況です。ただ実際、初めは新しいオペレーションモデルを日本で作り上げる必要があるので、私たちがまずゼロイチで立ち上げることになります。私も実際に現場に出ていきます。

電動キックボードの機体は物流や運送でいわれる“ミルクラン方式”(巡回集荷)で回収や充電、メンテナンスをおこなっていまして、例えばポートが20箇所あれば20箇所をトラックで回っていく方式なのですが、私はマトリックスモデルでの新しいオペレーションを考えています。
そこで成功パターンモデルを確立したうえで、他の都市にコピーしていくような展開を計画しています。そのゼロイチの部分は私達がやるのですが、それを展開する際は地元の企業さんと連携するイメージです。

途中で法整備のお話もありましたが、法整備以外にも社会受容性も大事になってくると思うのですが、Birdは例えば高齢者の方でも使えるようなサービスになっていくのでしょうか。

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西村さん
Icon brj miyauchi
宮内さん

二輪の電動キックボードでは、高齢者の方には難しいかなと思います。ただ、いま目の前に見せるものは二輪の電動キックボードなのですが、三輪やWHILLさんとのタイアップでの四輪も進めていっています。
電動キックボードの普及は私たちにとっては物語の第1章という位置づけで、誰がどのようにBirdを活用するかをメインテーマにしています。いまは例えば、訪問ヘルパーや介護福祉士に格安でサービスを提供し、高齢者を助ける若者を助けているというような形です。
その先の高齢者自身の支援は他社さんとの連携、協業により目指していければなと思っています。

参加者アンケートより

移動媒体の種類の増加は非常に嬉しいトピックスだと考えております。広く多くの方に移動の自由が行き渡る世の中になっていくと良いなと思いました。

自動車メーカーの方

マイクロモビリティに関する複数社の取組を俯瞰できたことはうれしい。今後もテーマを絞った講演を期待しています。

大学の方

コロナ禍の収束後、リアルな人の動きがどうなるか、行動変容が見えないのが不安。あらたな社会環境と移動手段がダイナミックに変わっていくのだろうと感じた。

コンサルティング会社の方

最後に

改めまして、参加者の皆さま、ご講演くださった清水様、工藤様、福岡様、宮内様、そして進行くださった西村様に深くお礼申し上げます。誠にありがとうございました!

モビリティピッチは今後もモビリティに関わる実務者の方々からのよりリアルな状況をお話しいただき、気づきを与えあえるコミュニティ作りを目指します。

2021年度は春・夏・秋・冬のシーズンごとにウェブセミナー形式で開催します。
皆さまのご参加をお待ちしております!

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