オンデマンド交通の実践

モビリティピッチは、MaaSに真剣に取り組む方のための情報共有のイベントです。
小田急電鉄とヴァル研究所が共催し、MaaSの実務者が語る正しい情報や具体的な取り組み、課題の共有と、気づきを与えあえる場・コミュニティ作りを目指します。

第3回目ではオンデマンド交通に先進的に取り組まれている4名に講演いただきました。
モデレーターは小田急グループの次世代モビリティチームのリーダーでもある西村 潤也さんです。

おひとり15分という短い中で、濃縮したさまざまな情報や事例を共有いただきました。
いくつかのトピックスを抜粋してご紹介します。

※実際のセミナーでは詳細なデータ等もご紹介いただきましたが、本レポートでは割愛している箇所がございます。

プログラム

※講演者のご所属、お役職は2021年5月時点のものです。

講演1
Mobility Innovation
モビリティサービスを通じて、人々の暮らしをもっと豊かに

Mobility Innovation モビリティサービスを通じて、人々の暮らしをもっと豊かに

MONET Technologies株式会社(以下、MONET)事業本部 事業推進部 担当部長 小澤 拓郎さんより、未来から逆算したモビリティや地域の課題解決への取り組みについて講演いただきました。

小澤 拓郎さんプロフィール

Icon list red MONETのMaaS実現に向けた取り組み

はじめに、会社設立の背景や、MaaSへの取り組みの概要について解説いただきました。

自動運転時代に向けたバックキャスト

MONETは、ソフトバンク株式会社とトヨタ自動車株式会社がMaaSの実現を目指して設立されました。さまざまな自動車メーカーとの連携を土台にしたMaaSへのアプローチが特徴的です。

将来的に自動運転が主流となった時に、自動運転車をどう使うか。自動運転時代という未来から逆算して、いわゆるバックキャストで取り組んでおり、オンデマンドバスの構築から、オンデマンドバス+サービスカーを展開されています。

各地域の課題

マイカー中心地域で発生する高齢化に伴う免許返納、地域交通衰退による買い物困難者の救済といった課題に対して自治体と連携して解決し、さらに企業との連携により、自動運転のコンビニカーやフードデリバリーカーなどの新しい価値を創造し、地域の活性化をはかることを目指していると述べられました。

Icon list red MaaS実現に向けた取り組み

続いて、MONETが構築するMaaSプラットフォームと、開発する車両についてご紹介いただきました。
MONETはオンデマンド交通のシステムを開発・提供されていますが、MaaSのプラットフォーマーとしてのサービスも展開されています。

MONETプラットフォーム

MaaSの構築には、利用者の需要とサービス提供者の供給のリアルタイムなマッチングが必要です。
これを実現するために、モビリティと提供サービスのさまざまなデータや機能を集約し、相互につなぐものとして、MONETプラットフォームを展開されています。

また、さまざまなサービス提供に対応できる「マルチタスク車両」を開発・販売されています。

マルチタスク車両

自動運転時代では座席をより自由に配置できると予想されることから、ビジネスや観光、医療・介護など、さまざまなサービス・シーンに適切なレイアウトを今の段階から検証できるように、工具不要で車室内を自由にレイアウトできる車両となっているそうです。

Icon list red オンデマンド交通の取組事例

続いて、オンデマンド交通のさまざまな取組事例をご紹介いただきました。

取組紹介:射水市

富山県射水市では、観光客の交通と地域住民の交通をうまく共存できないか、という考えから、定時運行型・オンデマンド運行型の両面を持つモビリティサービスの実証実験を実施されました。
平日は地域住民向けの近距離の移動手段としてオンデマンドで運行し、休日は観光客向けに定時・定路線で運行して、1つのモビリティサービスで日常・観光両方の移動手段をかねる事例です。

取組紹介:伊那市

長野県伊那市では、モビリティの中でサービスの提供ができるのではないか、という観点から、医療サービスを患者のもとへ届けるオンライン診療の実証実験を実施。
さらに拡張して、お薬の配送・服薬指導を患者のもとへ届け、“通院”という負担を軽減する取り組みも実施していると言います。

医療サービスの移動という点で、福島県国見町の事例もご紹介いただきました。
国見町ではもともと通院シャトルバスがあったものの、利便性が低く利用者が減少傾向だったそうです。

そこで、通院の利便性を向上するため、オンデマンド交通の仕組みを導入。病院の受付予約を電話で行うと、病院の窓口がオンデマンド交通の予約を行い、患者のもとへ通院の手段を提供することを可能としました。

次回診察+通院を同時予約

高齢者の方がスマートフォンでの操作をせずに済む形で、利便性を高めています。

今後、通院に加え薬局やスーパーマーケットなどへの地域の足として、町内に複数ある交通手段を統合し、新しい公共交通を実践していく計画だと言います。

また、群馬県富岡市の、移動手段をすべてオンデマンド交通化する事例もご紹介いただきました。

取組背景

富岡市は車がないと生活しづらい地域であるなかで、高齢化率が高く、免許返納が年々増加傾向です。一方、自家用車の代わりとなる公共交通の稼働率はなかなか上げられないという課題がありました。

そこで、地域のモビリティをすべてオンデマンドの同一車両にするという画期的な取り組みを実施しています。

シンプルな新モビリティ検討

住居やスーパーマーケット、病院、郵便局など、利用者が行きたい場所のすぐ近くに乗降ポイントを設定。乗降ポイントを増やすだけでなく、利用状況を加味して減らすことも実施するところが特徴的な事例です。

取り組みのなかでは乗降ポイントすべてにアプリの利用を促す案内を設置して高齢者のデジタル化も促進されており、その結果、利用者の約半分がアプリからオンデマンド交通を予約している状況だと言います。

Q&A

小澤さんとモデレーターの西村さんのQ&Aをいくつかご紹介します。

たくさんの事例をご紹介いただきありがとうございました。どの事例についてお伺いするか悩ましいのですが、医療の事例について。
全国でも医療の事例は少ないと思うのですが、小澤さんは実際に浜松市や伊那市で薬を届けるというところまでやっていらっしゃいます。
ただ、病院に来ていただくのではなく、病院が行くということは、効率が下がったり、ドライバーの人件費もかかったりすると思います。
この点について、地域全体でどのようにカバーしているのか教えていただきたいです

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西村さん
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小澤さん

医療においては、サービスを提供するエリアも検討する必要があります。
街中でかんたんに病院に行くことができるエリアでは、医療MaaSが適切かというと疑問があります。

一方で、中山間地域のような、医療機関まで距離が遠いために移動に時間がかかるエリアや、お医者さまが往診しているケースでは、お医者さまは病院にいて、車両だけが患者の近くまで回る方が効率的です。
また、複数の医療機関で共同で利用することで、効率を上げています。
伊那市においても6つの病院が共同で利用しており、浜松市においても同様です。共同で利用する仲間が集ってくると、より効率的になると思います。

また、お医者様が治療に専念できる時間を増やす、という面での効率化も目指しています

小田急の立場から申し上げると、どうしてもドライバーの人件費や、そもそも需要があまりないところにオンデマンド交通を入れるということで、黒字化が難しいのではと感じます。
サービスの利用者数を増やす方策として病院で電話の受付をしながら配車手配をしたり、乗降ポイントを生活に密着した場所に設定したりされているとのことでしたが、利用率を増やすための手段やアイデアがあったら教えてください

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西村さん
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小澤さん

移動はやはり手段であって、目的ではありません。また、1回利用していただかないと、リピーターも増えません。
そのため、よく実施するのが、実証実験などの際、移動の目的とセットにした体験乗車会を企画、提供しています。

これに乗って買い物に行きましょうとか、これに乗ってあの施設に行くとこんな特典がもらえますといった施策で、まずは知っていただくこと。
また、プロモーションをどのようにやっていくかということもポイントでしょうか。

例えば富岡市の取り組みでは、スタートするまで1年間ほど、事前に地域の方々へ今後オンデマンド交通になることを訴求しながら、乗降ポイントがどこがよいか、どういう形なら乗れるか、などの共有も行っていました。
事前の告知、プロモーションをいかに実施していくかが大事だと思っています

講演2
ネクスト・モビリティ社のAI活用型オンデマンドバスの取組みについて

ネクスト・モビリティ社のAI活用型オンデマンドバスの取組みについて

ネクスト・モビリティ株式会社 代表取締役副社長 兼 CSO 藤岡 健裕さんよりAI活用型オンデマンドバスの取組みについて講演いただきました。

藤岡 健裕さんのプロフィール

Icon list red オンデマンドバス導入成功の鍵

ネクスト・モビリティでは、福岡でのAIを活用したオンデマンドバスの自主運行事業で培ったノウハウを活かし、全国の地域・事業者にソリューションを提供しています。

ほかモビリティと同じく、オンデマンドバスも“いかに数多くの利用者に利用していただくか”がポイントです。

講演では、乗客数の推移グラフや実績値をもとに、うまくいっているところ・いっていないところを詳細にご共有いただきました。さらに、福岡等同社が導入済みのエリアでの取り組みを分析・考察した結果、オンデマンドバスの利用度合いは“導入するエリアのターゲットとなる利用者層の交通手段の有無”によって大きく変わるとの見解を示されていました。

展開中のサービス

福岡市のアイランドシティでは、2019年4月から路線バスを補完する目的でオンデマンドバスのサービスが導入され、継続的なマーケティング活動により、サービスの登録者・利用者数が順調に伸びていました。
しかし、2020年4月頃からコロナ禍にともない伸び悩み、また、オンデマンドバスの定着利用者率(サービス登録者のうち、過去1ヶ月間に利用している方の割合)が低い状況であると言います。

登録者数と利用率

一方で、宗像市や塩尻市は福岡市に比べて利用者の母数は少ないものの、定着利用者率が高く、コロナ禍の影響も小さかったそうです。
この要因のひとつとして、福岡市ではオンデマンドバスの代替交通が多く、宗像市や塩尻市は代替交通が少ないという背景を指摘されました。

このことから、オンデマンドバスの導入では、エリアの交通ネットワーク全体を把握したうえで、各交通モードの役割分担をどう描いていくかが鍵になると言います。

Icon list red デマンド型交通の役割期待

続いて、具体的にどのようなエリアで、デマンド型交通の役割が期待できるのかを解説いただきました。

交通ネットワークにおけるデマンド型公共交通の役割期待

公共交通が網羅されていて、なおかつタクシーやほかモビリティがある都市中心部では、デマンド交通の役割はほとんどなく、一方、福岡のアイランドシティのような中核都市の郊外部では、路線バスの補完として一定の役割があると言います。

また、宗像市や塩尻市のような一般市町村の中心部におけるデマンド交通は、役割が大きくあり、さらに、一般市町村郊外部では、路線バスなどの代替として非常に多くの役割があり、輸送力なのか、コストなのか、求められていることもそれぞれ存在するとの見解を述べられました。

Icon list red オンデマンドバス導入の課題と解決策

続いて、オンデマンドバス導入時の4つの課題と解決策について解説いただきました。

導入の課題

もっとも重要なのは、解決すべき課題が何かを明確にすること。 デマンドありきでは地域課題とのギャップを生む可能性があるため、その課題を解決する手段としてどのようなソリューションがよいかを考えることが重要だと述べられました。

これらのさまざまな課題を解決し、オンデマンドバスの導入を成功させるためには、各当事者における役割分担がポイントになると続けられました。

導入に向けた役割分担
藤岡さん

なにより自治体の課題認識がすべての起点です。課題を明確にしたうえで自治体がリーダーシップをとって、地域でのオンデマンドバス導入を進めていくこと。
目的・課題を明確にし、その課題解決に向けた当事者の意欲と情熱、組織としてのコミットメントが一番大事なことだと考えています

Q&A

藤岡さんとモデレーターの西村さんのQ&Aをご紹介します。

デマンド型交通の役割を示すスライドが非常にわかりやすかったです。

交通ネットワークにおけるデマンド型公共交通の役割期待

コストの内訳は人件費が主だと言われていました。このことから1台当たり何人乗せられるか、という計算も必要になってくると思うのですが、例えば今回お話しいただいた福岡のアイランドシティや塩尻、宗像では大体何人ぐらいがボーダーになると考えますか?
もちろん、料金にもよると思うのですが、教えていただきたいです

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西村さん
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藤岡さん

大きく2つ、自主採算を目指してオントップでやるのか、あるいは既存の交通手段の代替で導入するか、つまり既存の交通に対しての財源がある前提でやるのかによって変わります。

アイランドのようにオントップで自主採算を目指してやる場合、1台当たり100人ほどは乗せていかないと採算ラインに至りません。
一方、塩尻、宗像のように既存交通の代替で導入する場合は、既存交通の赤字に対してどれくらい減らせるかが論点になります。

多くの自治体は経費カバー率が大体20%を割ってくると危機感を持たれます。30%、40%とどう改善していくか。財務改善と利便性の改善をどう両立させていくか、いわゆる冷静と情熱の間は自治体の意思になります。

塩尻、宗像の時は、経費カバー率は30%、40%で良いという判断だったため、1台当たり40〜50人の乗車で経費カバー改善目標の達成が可能です

講演3
スマートモビリティ革命 −AIデマンド交通の現在−

スマートモビリティ革命 −AIデマンド交通の現在−

株式会社未来シェア 代表取締役 松舘 渉さんより、オンデマンド交通が技術的にどうなっているか、また、地域の事例についてご紹介いただきました。

株式会社未来シェアのプロフィール

Icon list red AIを活用したオンデマンドの乗合・便乗配車「SAVS」

はじめに、未来シェアが提供する乗合の配車プラットフォーム「SAVS(サブス/Smart Access Vehicle Service)」についてご説明いただきました。

SAVS(Smart Access Vehicle Service)

SAVSは、人と車をマッチングさせるためのAIのシステム、プラットフォームです。
タクシーのようにいつでもドア to ドアで好きな時に呼べるという利便性と、バスのような乗り合い交通の効率性という両方を実現する仕組みになっています。

移動需要には、どこからどこまで行きたいという空間的な要求と、何時に出て何時に着きたいという時間的な要求などがあります。要求がバラバラの中で、車をどのように走らせるのが最も効率的かということをAIが瞬時に判断します。

オンデマンド・リアルタイム乗合(AI便乗)配車

SAVSの基本的技術は、逐次最適挿入法と道路ネットワークデータを使った経路検索だと言います。

逐次最適挿入法は、利用者から出発・目的地の要求、つまりオンデマンドの予約が入った瞬間に、AIが各車両にどのような順番で誰を載せて誰を降ろすかという回答を計算します。
さらに、道路ネットワークを活用した経路検索を行うため、道路の混雑状況なども考慮したより正確な時間を計算したオンデマンド交通を実現しているそうです。

講演のなかで、実際に出発・目的地の指定から1秒程度で予約が完了する流れをデモンストレーションいただきました。

オンデマンド・リアルタイム乗合(AI便乗)配車

SAVSのクラウドプラットフォームはAPIの形で提供されており、乗客アプリやドライバーアプリ、コールセンターアプリなどのアプリケーションと組み合わせて、自社で運用するSAVSアプリや、各社のMaaSアプリなどに活用されています。

SAVSクラウドプラットフォーム

Icon list red 相乗りと乗合の違い

続けて、「相乗り」と「乗合」の違いについて説明いただきました。

相乗り(乗車前確定)と乗合(AI便乗)の違い

相乗りの場合は複数人が配車予約をして、相乗りが確定してから配車が決定されます。 このため、最初に配車予約をした1人目は相乗りの相手を待つ時間が発生したり、相乗り確定後に配車予約をした方は乗ることができません。

一方、乗合の場合は1人が予約をした時点で配車が決定し、乗車・移動中に2人目が配車予約を行うと、それを迎えに行くような経路に変わり、目的地へ向かいます。

実際の相乗りタクシーと乗合タクシーの実証実験の対比もご紹介いただきました。

相乗り(乗車前確定)と乗合(AI便乗)の違い

Icon list red SAVSを利用したデマンド交通の事例

最後に、各地でのSAVSの取り組み事例をご紹介いただきました。

事例:しずおかMaaS実証実験・ワクチン接種(らくタク)

MaaS基幹事業実証プロジェクト「しずおかMaaS」を展開する静岡市では、2019年2月から、SAVSを活用した観光シーン・日常シーン両面でのMaaS実証実験に取り組んでいます。

その経験と実績を活かし、新型コロナウイルスのワクチン接種についての発表後すぐに、接種会場への移動が困難な方の救済措置として送迎タクシーを計画。速やかなワクチン接種完了を狙い、ワクチン接種のコールセンターで接種と送迎タクシーの予約・手配の両方をワンストップで受け付けるという事例です。

続いて、札幌市でのフードデリバリーでの事例をご紹介いただきました。

事例:札幌市出前タクシー 食べタク

従来のデリバリーでは、配達員が1つの店舗から1、2人の注文者に届けて完了となる形が主流です。
SAVSのAI乗合・便乗の仕組みを活用することで、配達員が複数の店舗から複数の注文者に続けてデリバリーすることを可能とします。

ほか、KDDIの従業員を対象にした“オンデマンド相乗り通勤タクシー”の実証実験や、岡山県久米南町の町内全域における乗り合いタクシーと、それを活用した宅配サービスの事例についてもご紹介いただきました。

Q&A

松舘さんとモデレーターの西村さんのQ&Aをご紹介します。

タクシーの相乗りと乗合・便乗配車の違いが興味深かったです。乗合率はどちらが高くなるかというと、需要にもよるかと思うのですが、もう少し詳しく伺いたいです

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西村さん
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松館さん

乗合率、相乗率を高めるという観点では、KDDIさんのオンデマンド相乗り通勤タクシーの例があります。

事例:オンデマンド相乗り通勤タクシーサービス

予約方法が出勤時・退勤それぞれで時間が決まっているため、ある程度 予約数を貯めることができます。これによって、車両に載せられる人数を詰め込むという計算がしやすく、その分 効率が上がると思います

さきほどの藤岡さんの講演でもあったように、“1台あたり何人乗せられるか”がひとつのキーになって、一定の予約数、ある程度の需要の“束”を拾って相乗りを発生させることが効率的なのですね。需要の“束”をいかに拾っていくかがポイントになりそうです。

ちなみに、未来シェア様は配車のプラットフォームを提供されていますが、藤岡さんの講演であった“マーケティング活動”の展開までにも入り込んでいらっしゃるでしょうか

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西村さん
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松館さん

現地でのマーケティング活動については、地元の事業者や自治体にお任せするしかないかなと思っています。

一方で、プラットフォームを提供するなかで、さまざまデータが膨大に蓄積されていきますので、そのデータをもとに、例えばこの時間帯は利用が少ないからこう使えるのではないかとか、このあたりに車両を増やしたらいいのではないか、といったアドバイスをしていくことが多くあります。

MaaSアプリなどを展開しているプレイヤーの方向けに展開しているソリューション、プラットフォームがSAVSというイメージです

講演4
小田急グループのオンデマンド交通の実践

小田急グループのオンデマンド交通の実践

小田急電鉄株式会社 次世代モビリティチーム MaaSエコシステムマネジャー 藤垣 洋平さんより、小田急電鉄におけるオンデマンド交通実証実験の取組みについて、配車の方法とアルゴリズムと本格運行に向けた課題を含め講演いただきました。

藤垣 洋平さんのプロフィール

Icon list red オンデマンド交通の実証実験について

まず、小田急電鉄の次世代モビリティに関する取り組みの中から、新しいオンデマンド交通サービスを2つご紹介いただきました。

オンデマンド交通「しんゆりシャトル」

1つ目は、神奈川県川崎市の新百合ヶ丘駅周辺を対象とした「しんゆりシャトル」です。
運行範囲は新百合ヶ丘駅周辺の約5キロ平方メートルで、配車システムにはスペインの「Shotl」を活用していると言います。

第1期では需要そのものというよりも、技術面の実証に主眼を置き、乗車無料で展開。第2期では有料にし、小田急電鉄のMaaSアプリ「EMot」上で配車の予約・手配と決済が可能な仕組みで実証実験を実施されました。

オンデマンド交通「E-バス」

2つ目は東京都町田市の団地周辺を対象とした「E-バス」です。
山崎団地は最寄りの町田駅までは路線バスで約20分かかる場所に位置し、団地周辺エリアに交通空白地区が点在します。それを補完する目的でこのオンデマンド交通を導入したそうです。

第1期ではしんゆりシャトルと同じく乗車無料で実施し、商業施設の割引券を閑散時間帯に配布し、擬似的なダイナミックプライシングを検証。医療・福祉施設との連携も実施されていました。
アンケートによる利用意向調査の結果、医療・福祉施設利用者の継続利用意向は100%で、回答者全体の有償時の継続利用意向も94%という高い継続利用意向を確認できたとのことです。

Icon list red 配車の方法とアルゴリズム

続けて、2つのオンデマンド交通について、配車の方法とアルゴリズムについて解説いただきました。

配車の方法とアルゴリズム

しんゆりシャトルでは、Shotlのダイナミックミーティングポイント型、E-バスについては、AI運行バスミーティングポイント型の配車アルゴリズムを採用。

ミーティングポイント型は、多くの配車システムで採用されているアルゴリズムです。
出発・目的地を事前に設定された乗降ポイントの中から選んで指定するもので、アプリと電話予約の併用が容易だと言います。

配車アルゴリズム:ミーティングポイント型

ダイナミックミーティングポイント型は、よりタクシーに近い形で、出発・目的地を地図上で指定し、それをもとシステムが最適な乗降ポイントを判断して利用者に提案する仕組みです。

配車アルゴリズム:ダイナミックミーティングポイント型

同じA地点からB地点の移動でも、その時の状況に応じて乗降ポイントが変わる可能性があるため、利用の“慣れ”が必要となりますが、利用者と車両の双方にとって効率的な移動を提案することができるため、この点に関して検証を進めていくと述べられました。

Icon list red 数か月の実証実験から需要を如何に予測するか

続けて、オンデマンド交通の本格運行に向けた課題・検討事項についてお話しいただきました。

しんゆりシャトルやE-バスなど、数か月の実証実験では、潜在的な利用者層の認知度向上にともない、徐々に利用者数が増加する傾向にある一方で、短期間では顕在化しないニーズがあると言います。

例えば、1年通う習い事の場所を探している時、オンデマンド交通で通いやすい場所を見つけられたとしても、運行が数ヶ月で終わることがわかっている場合、通い続けることが難しいと予想できるためその場所を選ばす、結果オンデマンド交通を利用しないというケースも考えられます。

課題1:数か月間の実証実験から需要をいかに予測するか

こうした顕在化しないニーズも含めて、本格運用時の目標採算ラインをしっかりと考えたうえで今後の計画を立てることが重要であるものの、潜在需要までを含めた需要の把握は容易ではない課題であると述べられました。

また、継続運行に適した体制づくりの課題として、運行事業者の問題と、周辺サービスの担い手について挙げられました。

運行事業者としてはバス事業者やタクシー事業者を巻き込んでいくことや、交通事業者を頼れない地域では自家用有償運送を検討する必要があります。

運行以外の周辺サービスの担い手に関しては、例えば電話予約の受付・予約代行を診療所などの医療機関の窓口や、自治会事務所などで実施する場合もあり、地域との連携をどのように進めていくかという点も考慮する必要があるとのことです。

Q&A

藤垣さんとモデレーターの西村さんのQ&Aをいくつかご紹介します。

オンデマンドの配車アルゴリズムについて、MONETは通常のミーティングポイント型で、ネクスト・モビリティとSAVSではミーティングポイント型、ダイナミックミーティング型両方が可能です。小田急では、この両方の型をひとつのMaaSアプリで展開していることが特徴的なところと思います。

また、もうひとつの特徴である、ハブアンドスポークの主線は路線バスで、支線にオンデマンドバス・E-バスを使うというその有用性について教えてください

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西村さん
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藤垣さん

ハブアンドスポークの支線として利用いただくE-バスの実験では、路線バスが到着する乗車ターミナルで乗り換えができるようにしました。
ただ正直、短期間の実証実験のためか、乗り換え需要はそこまで多く顕在化されませんでした。
課題として、路線バスとオンデマンドバスの乗り継ぎを想定し、よりスムーズに乗り継ぎできるようにするためのピンポイントでの時間指定の在り方などの検討が重要だと思っています

しんゆりシャトルとE-バスという2つのシステム・実証実験で、予約・手配や決済にMaaSアプリ EMotを採用していますが、その親和性について、オンデマンド交通単独のアプリでの展開とMaaSアプリでの展開のどちらが良いかなど見解を伺いたいです

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西村さん
Icon odk fujigaki
藤垣さん

MaaSアプリで展開することで、既にMaaSアプリを利用していただいている方の場合は、オンデマンド交通を利用するために追加でアプリをインストールする必要がなく、より使い勝手がよいのではと思います。

一方で、高齢の方ですとアプリではなく電話での予約の方が良いというご意見もありました。
また、アプリの完成度について、Shotlなどのように配車システムとあわせて何年も運用されているアプリと比べると差があり、その完成度を高めるには時間と労力が必要であるので、バランスを見ながら検討、改善していく必要があると考えています

参加者アンケートより

さまざまなMaaSシステムが開発されている中、どのような目的やターゲットにおいて使いやすいように工夫されているのか、実際の使われ方等について関心が湧いた。

コンサルティング会社の方

デマンド交通を利用する世代とそれに必要な技術 (ネット使用等) との間の乖離を解消するための試みが増えているのを感じました。

デジタル地図調整業者の方

同分野で取り組んでいる複数企業の話を一度に聞くチャンスは実は珍しいと思います。その点でとてもありがたい機会です。場を作っていただき、ありがとうございます。

交通事業者の方

最後に

改めまして、参加者の皆さま、ご講演くださった小澤様、藤岡様、松館様、藤垣様、そして進行くださった西村様に深くお礼申し上げます。誠にありがとうございました!

モビリティピッチは今後もモビリティに関わる実務者の方々からのよりリアルな状況をお話しいただき、気づきを与えあえるコミュニティ作りを目指します。

2021年度は春・夏・秋・冬のシーズンごとにウェブセミナー形式で開催します。
皆さまのご参加をお待ちしております!

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