MaaSアプリの展開

モビリティピッチは、MaaSに真剣に取り組む方のための情報共有イベントです。
小田急電鉄とヴァル研究所が共催し、MaaSの実務者が語る正しい情報や具体的な状況、課題の共有と、気づきを与えあえる場・コミュニティ作りを目指します。

第2回目ではMaaSアプリの開発・活用に先進的に取り組まれている4名に講演いただきました。
モデレーターは小田急グループの次世代モビリティチームのリーダーでもある西村 潤也さんです。

おひとり15分ほどの短い中で、実務者ならではの事例や実績を共有いただきました。
この開催レポートでは、いくつかのトピックスを抜粋してご紹介します。

※実際のセミナーでは詳細なデータ等もご紹介いただきましたが、本レポートでは割愛している箇所がございます。

プログラム

※講演者のご所属、お役職は2021年4月時点のものです。

講演1
マルチモーダルモビリティサービス「my route」のご紹介

マルチモーダルモビリティサービス「my route」のご紹介

トヨタファイナンシャルサービス株式会社 シニアマネージャ 金子 直人さんから、マルチモーダルモビリティサービス「my route」の変遷や今後の展開について発表いただきました。

トヨタファイナンシャルサービス株式会社 シニアマネージャ 金子 直人さんプロフィール

Icon list red my route とは

はじめに、金子さんより「my route」のビジョンと目的、ビジネスモデルについて解説いただきました。

my routeは「もっと移動したくなる環境づくりを通じて、『すべての人の移動の自由』と『ずっとにぎわう街づくり』に貢献したい」というビジョンのもと提供されているトヨタのMaaSアプリです。

世の中が便利になって、かつ高齢化社会も進むにつれ“移動”そのものが減っていき、経済の縮小も予想されます。そこで、“移動”そのものを生み出し、街づくりに貢献することを目指しています。

my routeとは

my routeのビジネスモデルの特色は、マルチモーダルプラットフォーム (インターフェース) という位置づけで、各地域のパートナーと“共創”しながら移動需要を創出し、地域の活性化を図る、という取り組みです。
地域の課題はその地域で暮らすからこそ実感し、深く理解できるものであるため、地域のパートナーとの連携を特に重視しているとのことです。

Icon list red インターフェースとしての基本価値

続けて、my routeのインターフェースとしての基本価値について具体的に解説いただきました。
my routeでは「マルチモーダルルート検索」「予約・決済」「イベント・スポット情報」の三本柱で展開しています。

インターフェースとしての基本価値

マルチモーダルルート検索では、さまざまな移動手段を組み合わせた経路検索に加え、複数人で移動する際の金額も表示しており、「4人で行くならタクシーでも意外と安い」といった新しい発見を提供しています。

また、イベントやお店など、地元ならではの情報を案内し、地域の活性化、移動の目的作りに繋げられています。

Icon list red my routeの実績と取組事例

最後に、my routeの実績と、“共創”の取り組み事例をご共有いただきました。

my routeの実績に関して

ユーザーの約半数が「行動範囲の広がり」を実感、「街への興味・関心」も高まったとの回答から、my routeなどのMaaSアプリ普及による人々の行動変容が期待されます。

ほか事業者との取り組みとしては、西日本鉄道と連携したバス・鉄道フリー乗車券や、横浜市交通局と連携したデジタルフリーチケット、水俣市のテイクアウト情報などさまざまな商品・サービスをmy routeで展開。地域のお客様にとってより魅力的な商品を展開することで、満足度向上やユーザー定着を目指していくとのことです。

事業者様との取組事例①
金子さん 今後もさまざまな地域で、いろいろな立場や役割の方々と連携し、パートナーシップを広げて課題解決にチャレンジしていきたいと考えています

Q&A

金子さんとモデレーターの西村さんのQ&Aをいくつかご紹介します。

さまざまなエリアでの連携や展開には司令塔となる金子さんたちの統制、コントロールが必要なのかなと思います。
そこで、開発や運用の体制はどのようになっているか教えてください

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西村さん
Icon toyota kaneko
金子さん

開発は内製化を目指していますが、現在は外部のITベンダーを協力者としてにシステム開発をしていただいています。
一方で、自社やKINTOなど関連会社が抱えているエンジニアがベンダーマネジメントや企画・設計を行い、全体のヘッドクォーターとしてトヨタファイナンシャルサービスがマネジメントしています

今日お聞きの方で、各エリア・事業者で電子チケットを企画、検討している方がいらっしゃると思います。ただ、電子チケットにしてもなかなか売れないのでは、という思いもあります。
my routeの実績に関して、デジタルチケット販売が月13,000枚以上とありましたが、実際に売れているチケットの特性や、価格なのかフリーパスなのかプロモーションなのか、何か秘訣があれば教えてください

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西村さん
Icon toyota kaneko
金子さん

多くの販売枚数のうち、一番貢献いただいているのが福岡の西鉄さまのフリーパスで、地元の皆さまにご好評いただいていて、実績が出ています。ただ、一朝一夕で月13,000枚になったわけではなく、当初は月数百枚も売れれば……というところから、徐々に徐々に積み上げての今になります。
西鉄のみなさまとの地道な認知活動が少しずつ広がっていった結果だと思っています。

ひとつ言えるのは、いわゆる観光客向けのチケットというよりは、例えば福岡市内で使える6時間のチケットが、地元に住んでいる方にしっかりと刺さって、リピーターになっていただいたということが13,000枚の背景にあると思っています。

もちろん観光型MaaSを否定するわけではないのですが、毎日ないし毎週使っていただけるアプリになるためには、日常的に使えるものとして広げて少しずつ積み重ねていくことが大事だと思っています

講演2
JR東日本のMaaSの取組み

JR東日本のMaaSの取組み〜人を起点にしたサービスデザインにチャレンジ〜

東日本旅客鉄道株式会社 MaaS・Suica推進本部MaaS事業部門 次長 鷲谷 敦子さんから「JR東日本のMaaSの取組み」について発表いただきました。

東日本旅客鉄道株式会社 MaaS・Suica推進本部MaaS事業部門 次長 鷲谷 敦子さんのプロフィール

Icon list red MaaSへの取り組み・考え方

はじめに、鷲谷さんから日本のMaaSの現状をふまえ、JR東日本がどのような考えで取り組んでいるのかという点についてお話しいただきました。

「日本のMaaS」の特徴〜世界との違い〜

JR東日本としてMaaSを考えた時に、日本にはすでに繋がっているものや便利なもの、例えば各社の経路検索エンジンや電車にも乗れて買い物もできる交通系ICカードといったMaaSの素材があることへの気付きがあり、そこで、すでにあるものをうまく組み合わせて、ないものを補充しながら、人々の暮らしの向上と地域の活性化に貢献していきたい、と考えたそうです。

その具体的なビジョンが、2018年7月に発表された「変革2027」の図です。

JR東日本グループ経営ビジョン「変革2027」〜シームレスな移動の実現〜

鉄道の前後を含めたシームレスな移動や、乗り物に加えてホテルや目的地に関する事柄など、移動の楽しみを含めて全体でひとつのサービスとして提供する“モビリティ・リンケージ・プラットフォーム”、今で言うMaaSプラットフォームを作っていこう、と掲げられました。

※構想当時はMaaSという言葉がまだ広く認知されていなかったため、交通を繋げていくプラットフォームという意味を込めた造語にされたそうです。

モビリティ・リンケージ・プラットフォームとは

鉄道に加えて地域の暮らし全般、地域の活性化全般に貢献していく、というミッションをもとに、MaaSにおいても乗り物にとどまらず、移動の目的や楽しみを含めた暮らし全体をカバーするような形を目指していきたいと述べられました。

JR東日本が目指すMaaS〜移動を促し、人々の生活を支え、地域活性化につなげる〜

Icon list red 実証実験・MaaSアプリの概要

続いて、MaaS実現に向けて複数展開されている実証実験やMaaSアプリのなかから3つの事例を共有いただきました。

まず1つめは「JR東日本アプリ」です。
鉄道やバス、航空などでの移動時に日常的に使ってもらうことを想定としつつ、観光型MaaSにもリンクさせることで日常から非日常への橋渡しの役割も担っているそうです。

アプリの発展例として、リアルタイム経路検索の実証実験や、列車の混雑情報の提供、航空との連携、JR西日本様のアプリ「WESTER」との連携についてもご紹介いただきました。

【MaaSアプリ】JR東日本アプリの発展

2つめは「都市圏」のニーズを想定したアプリ「Ringo Pass」です。
鉄道の前後、いわゆるファーストワンマイル・ラストワンマイルをカバーするべく、シェアサイクルやタクシーなどのモビリティを統合したサービスの実証実験を行っています。

例えば事前にクレジットカードとSuicaを登録しておくと、アプリ上でドコモ・バイクシェアのポート (自転車の拠点) を見つけたのち、現地で借りたい自転車にそのSuicaをタッチすることで開錠ができ、利用代金は1ヶ月分をまとめてクレジットカードで決済できるといった仕組みです。

3つめは観光型の各種MaaSアプリです。

観光型MaaSの展開

東急様と共同で取り組まれた伊豆の観光型MaaS「Izuko」のPhase1時点ではダウンロード型のアプリとして提供しましたが、観光という非日常使いのものに対してダウンロードをしていただくのはハードルが高いことから、その後の観光型MaaSではより気軽に利用できるものとしてWebアプリでの展開にシフトされています。

続けて、「TOHOKU MaaS」の事例を紹介いただきました。

【観光型MaaS】東北エリアにおける実証実験とTOHOKU MaaS

「TOHOKU MaaS」は観光型MaaSである一方、地域住民のご利用も想定したオンデマンド交通を展開しています。
このオンデマンド交通は電話での予約も可能で、スーパー、病院、市役所といった日常使いの場所にも乗降ポイントを設置。観光でも日常でもどちらにも使っていただけることを目指していると言います。

Icon list red 今後に向けて

MaaSの社会実装に向けて
鷲谷さん

MaaSは、日々の生活や経済を支える基礎になり得るのではないかと思います。その場合、民だけでも官だけでも限界が来てしまうはず。
MaaSを発展させていくには、国と地方自治体、企業が、同じ目的に向かって役割分担をして密接に連携していくことがカギになると思います。

言うことは簡単でもやることが難しいことは重々承知ですが、やらなければいけないことだと考え、新しい取り組みには新しい考え方や新しいルールで、ぜひモビリティピッチ参加者のみなさんともご一緒できれば幸いです。

Q&A

鷲谷さんとモデレーターの西村さんのQ&Aをいくつかご紹介します。

まず、トヨタさん・JR東日本さんという、それぞれの業界における両雄と言える企業の方々に発表いただけて良かったです。
鷲谷さんのお話しでも出ていたルート・チケット・ウォレットという要素は金子さんのお話しにも通ずるところがあり、また、どちらかというと安全重視なJR東日本さんのなかでも新しい手法やチーム編成を取り入れているところが参考になりました。

ちなみに、MaaS・Suica推進本部という、“Suica”よりも前に“MaaS”という言葉を置いた本部を作られていますが、何人ぐらいの体制なのでしょうか?

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西村さん
Icon jre washitani
鷲谷さん

MaaS・Suica合計で200人ぐらいです。統合前からSuicaの担当部署の人数が多く、MaaS専任のチームは50人ぐらいでしょうか。
内製化しているシステム開発の部隊や、例えば「TOHOKU MaaS」の企画・準備の際には地域のあちこちに足を運んで地元の自治体や企業の方々と議論や調整をして……といったこともあり、この人数になっています

東北エリアでのオンデマンド交通のお話がありましたが、二次交通との連携もひとつのキーだと思っています。メッセージも含めて、どのような連携をイメージされているか、お願いします

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西村さん
Icon jre washitani
鷲谷さん

地域にもともと二次交通がない場合、MaaSといってもつなげるものがないじゃないか、ということになります。
私たちJR東日本はもともと「地域とともに生きる」ことがミッションですので、MaaSかどうかということとは別に、これは重要な課題です。

ただ、民間企業だけで交通を整備していくというのも現実的ではありません。
まず民間企業の我々がトライしてみて、地元の皆さんの理解やご意見が得られたのであれば、地方自治体の方々も含めて、持続可能なものにするにはどうしたらよいかということを一緒に協議し、役割分担をして、継続していける。そういう連携をしていきたいなと思っています

講演3
コロナ下におけるMaaS

コロナ下におけるMaaS

東急株式会社 交通インフラ事業部 MaaS戦略課長 森田 創さんより、コロナ禍におけるMaaSとして、沿線型「DENTO」と観光型「Izuko」の取り組みについて講演いただきました。

東急株式会社 交通インフラ事業部 MaaS戦略課長 森田 創さんのプロフィール

Icon list red アフターコロナの社会とMaaSの役割

はじめに、東急におけるMaaSの解釈についてご説明いただきました。

コロナ以前は職・遊・住がそれぞれ機能分化していたところ、コロナ以降はそれらがシームレス化してきており、例えば家で仕事をすることや、これまで観光・遊ぶ場所であった伊豆などが働く場所になりえる状況です。

東急のMaaSは、この移動、働く、住む、遊ぶといったあらゆるものがすべてオールインワンで入って、シームレス化を促進するものと捉えていると言います。

コロナ後の社会とMaaSの役割について

Icon list red 沿線型MaaS「DENTO」について

続けて、沿線型MaaS「DENTO」についてお話しいただきました。

東急沿線MaaS「DENTO」実験(経緯と拡充方向性)

「DENTO」は2018年に田園都市線のたまプラーザ地区で小規模なMaaS実験をしたのがはじまりです。

2020年度、これから本格的に田園都市線でMaaSを手掛けようというときに、コロナの問題が発生。特に田園都市線はテレワークができる方が相当多いと見込まれ、通勤定期への戻りも悪いと言います。

このため、「DENTO」はコロナによって変わってしまった移動のニーズや働き方に合う実験を行い、いわゆるニューノーマルの中で、効果的な「移動サービス」「働き方のサービス」「外出支援の施策」をトライ&エラーで構築していくというコンセプトでのスタートとなったそうです。

沿線型MaaS「DENTO」(新しい移動サービス)

移動サービスとしては、新たに「相乗りハイヤー」や「通勤高速バス」を手がけられました。
相乗りハイヤーは、コロナ禍で減った飲み会により、18〜20時台に東京都心から住環境へ帰る列車が非常に混雑するようになった背景を受け、7人ほどが乗れるハイヤーでゆったりと帰ることができるサービスです。

通勤高速バスでは車内にWifiが完備されているため、移動中も仕事をすることができます。どこでも働ける世の中の流れを汲み、出発時間を9時過ぎに設定し、バスに乗車したタイミングを始業タイミングとしてできる、というメッセージも発信されています。

沿線型MaaS「DENTO」(新しい就労サービス)

働き方のサービスとしては、さまざまなテレワークのメニューを展開。都心まで移動しないまでも、小さな移動を生み出せるよう、工夫を凝らしているそうです。

さらに移動を生み出す施策としてチケット・クーポンの事例を共有いただきました。

沿線型MaaS「DENTO」(移動×グループ消費)

通常680円・520円の電車とバスの乗り放題チケットを、1日100円という破格で提供し、移動を促進。また、沿線グループ施設を中心とした優待クーポンと組み合わせ、移動における支出は大幅に下げた分、移動した先での消費を促進し、“オール東急” (東急全体) として収益を出せる仕組みづくりをされています。

100円チケットという交通費の負担を軽減する施策により、定期区間外への移動が発生、人々の行動変容を起こせるという裏付けについてもご紹介いただきました。

【ご参考】「DENTO」100円チケット(鉄道)のGPSデータ

Icon list red 観光型MaaS「Izuko」について

次に、JR東日本と共同の観光型MaaS「Izuko」について共有いただきました。

観光型MaaS「Izuko」フェーズ3 概要

伊豆を中心とした広域なMaaS「Izuko」はPhase1からPhase3まで連なり、社会実装に向けた最後の実証実験として、2021年3月いっぱいまでPhase3が実施されました。

観光型MaaS「Izuko」フェーズ3 アクセス傾向

Izukoサイトへの誘引で特に効果のあった施策に関して、ボリュームを多くとるにはJR東日本アプリや東急線アプリへの情報配信やSNS広告が効果的である一方、コンバージョンレートは、各事業者のWebサイトにあるお得なチケットの紹介ページが高かったといいます。

Q&A

森田さんとモデレーターの西村さんのQ&Aをいくつかご紹介します。

金子さん、鷲谷さんのお話の繋がりでいうと、アプリの提供方法について。「Izuko」はダウンロード型のアプリからWebアプリに変遷し、「DENTO」ははじめからLINEミニアプリとして提供されていすが、LINEを活用したメリットで何か共有できるものがあれば教えてください

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西村さん
Icon tokyu morita
森田さん

数ヶ月に1度行くくらいの伊豆と違って、東急沿線は日常利用が多いので、日常的に使われている「LINE」で利用のハードルを下げられたかなと思います。例えば、サービスに登録いただく際の心理的なハードルはWebアプリ以上に低かったのではと感じています。

一方で、登録したものの半数がチケット購入に至らなかったという結果がありましたので、登録していただいた後に、最後までもっと使っていただくためにどうすればいいか、という点を改善していきたいと思っています

後半の“オール東急” というキーワードがとても印象的でした。通勤定期による利用者の囲い込みが難しくなってきたなかで、オール東急で消費をしっかりと掴んでいく。かつ、それをデジタルでマーケティング、新しい商品設計までつながるという戦略が見て取れ、参考になりました。

「Izuko」では戦略的リピート率や、サイトへの誘引に関してお話しいただきましたが、交通のチケットのリピートを増やしていく、例えば伊豆へ行く人を増やしていくためのキーポイントや秘訣があれば教えてください

Icon odk nishimura
西村さん
Icon tokyu morita
森田さん

リピートをどのように増やすかという点は非常に悩んでいます。
例えば、これからコロナが落ち着いて、JR東日本さんと話し合いを交えたうえで、「Izuko」を継続していくことができるのであれば、「Izuko」をアプリにするという選択もあると思っています。

Webだと技術的に難しいプッシュ通知が非常に有効であることを「DENTO」で感じましたし、また、伊豆エリアはテレワークの場所としてどんどん需要が高まると思っています。

ある時は観光客、ある時はテレワークの場所としてリピートして伊豆に来るという、TPOに応じたいろいろな伊豆の使い方を促進していくためにも、アプリ化を視野にいれながらこれから考えていければと思っています

講演4
MaaSアプリ「EMot」

MaaSアプリ「EMot」

小田急電鉄株式会社 次世代モビリティチーム モビリティスペシャリスト 古賀 裕一郎さんから、MaaSアプリ『EMot』について講演いただきました。

小田急電鉄株式会社 次世代モビリティチーム モビリティスペシャリスト 古賀 裕一郎さんのプロフィール

Icon list red 小田急グループがMaaSに取り組む背景

はじめに、MaaSに取り組む理由、背景についてご紹介いただきました。

小田急グループがMaaSに取り組む理由

小田急グループでは鉄道・バス・タクシー・ケーブルカー・観光船などの多様なモビリティを保有しており、また、百貨店・スーパー・飲食店・観光施設など多様なサービス展開をされています。

人口増加にともなって沿線の開発などで成長する、というのがこれまでのビジネスモデルでした。
しかし、人口減少やコロナの影響などで移動自体の減少など、急激に変化する社会環境に対抗するためには新しいビジネスモデルが必要となり、その模索のなかでMaaSの実現を目指していると述べられました。

Icon list red MaaSアプリ「EMot」について

次に、本題であるMaaSアプリ「EMot」と事例をお話しいただきました。

MaaSアプリ「EMot(エモット)

EMotは、“もっといい「いきかた」”をコンセプトとして、複合経路検索、電子チケット、リアルタイム運行情報、混雑予報、交通サービス手配、周遊プランニングといった機能を保有しています。

また、EMotアプリを活用したさまざまなMaaSの取り組みを実践されており、例えば郊外型MaaSとして、商業施設と連携したバスの無料チケットを提供しています。

郊外型MaaS事例【川崎市新百合ヶ丘】

これは指定の商業施設で2,000円以上買い物をすると、路線バスの往復チケットが無料でもらえるという仕組みです。

実証実験の開始から毎月右肩上がりで利用数が増えており、また、アンケートの約6割の方が「購入額が増えた」との回答結果から、地域への浸透や、人々の消費行動の変化が起きるのではないか、との見解を述べられました。

続いて、観光型MaaSの事例をご紹介いただきました。

観光型MaaS事例 箱根

屈指の観光スポット・箱根エリアを舞台に展開され、複数の交通サービスを統合したお得な電子チケットを販売。また、その優待対象をEMotのマップ上で表現することで、利用者によりわかりやすい案内を実現されています。

続いて、日常使いを想定された「EMotパスポート」の事例を共有いただきました。
飲食と花のサブスクリプションサービスで、利用者に駅が持つ価値を改めて見直していただく、という狙いもあるそうです。

EMotパスポート(飲食・花のサブスクリプション)

このほか、小田急グループ以外の事業者との連携・取組事例として浜松・遠州鉄道との電子チケットやグルメイベントチケットの展開、川崎市との観光+移動のチケット企画についてもご紹介いただきました。

小田急グループ以外との取り組み事例

Icon list red 小田急グループの今後の戦略について

最後に、小田急グループの次世代モビリティ戦略についてお話しいただきました。

まとめのスライド
古賀さん

小田急グループはEMotを中心に、どういったチケットを作って売っていくかを考え、小田急沿線以外ではエリアパートナーと一緒に盛り上げていきたいと考えています。
また、カーシェアやシェアサイクルといったモビリティパートナーとのさまざまな連携を広げていきながら、EMotをより使い勝手のいいサービスに押し上げていきたいと考えています。

単なる既存サービスのデジタル化にとどまらず、新しい価値提供をしっかりと行っていく、ということをやっていければと思います。

Q&A

古賀さんとモデレーターの西村さんのQ&Aをご紹介します。

郊外型・都市型と観光型を一体的にスマホアプリで提供しているのが「EMot」の事例と思います。今日の話の流れでいうと、トヨタさんの「my route」と似ているように感じます。
そこで、交通事業者である小田急のMaaSアプリ「EMot」と、自動車側からのトヨタさんの「my route」の違いについて教えていただけますか

Icon odk nishimura
西村さん
Icon odk koga
古賀さん

あくまで個人的な意見として聞いていただければと思うのですが、交通事業者である小田急が提供している「EMot」は、公共交通を利用していただくことを主に置いているというのが1つのポイントだと思います。
カーシェアやレンタカーとの連携もしていますが、経路検索を使っていただいて、そこから公共交通で目的を果たしていただく、という動線設計が多いのかなと思います。

一方、トヨタさんの「my route」はクルマでの移動の提案が出てきます。経路検索をしたときに自家用車であったり、カーシェアやレンタカーでの経路検索も出てくるという点が、特徴的でおもしろい部分だと思います。

どちらが良い悪いという話ではなく、例えば普段は自家用車で旅行時に公共交通を使われる方や、逆に普段は公共交通を使っているけれど週末はレンタカーで出かけるといった方もいらっしゃるはずです。そういった利用シーンに合わせてさまざまな提案をしながら、みんなでいろいろな形を模索して盛り上げていければ良いんじゃないかなと思います。

参加者アンケートより

各社の動向について網羅的に知ることができ、とても良い機会になりました。ご担当の方から直接お話が聞けたため、理解がしやすかったと思います。また、組織体制や工夫していらっしゃる部分など、新聞等では知り得ない情報にも触れることができ、非常に興味深かったです。

交通事業者の方

MaaSアプリ事業を展開する各社の方の連携状況、展開の仕方(アプリ、WEB)等それぞれに特長があり、地域のニーズや目的等に応じて対応されている点を学ぶことが出来、有益でした。

コンサルティング会社の方

コロナ禍から移動が制限されてくる現状、移動を促す各種施策を発信していくための媒体であるMaaSの役割がより一層重要となることを強く認識するとともに、地元とのつながりがポイントであり、キーワードとして、地道なコミュニケーション・繰り返す・積み重ねることであることを理解しました。

交通事業者の方

最後に

改めまして、参加者の皆さま、ご講演くださった金子様、鷲谷様、森田様、古賀様、そして進行くださった西村様に深くお礼申し上げます。誠にありがとうございました!

モビリティピッチは今後もモビリティに関わる実務者の方々からのよりリアルな状況をお話しいただき、気づきを与えあえるコミュニティ作りを目指します。

2021年度は春・夏・秋・冬のシーズンごとにウェブセミナー形式で開催します。
皆さまのご参加をお待ちしております!

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